株式分割を行う理由
株式会社を設立する際には発行済株式総数を決める必要があります。多くのケースでは単価1万円で、最初の資本金の額で割って決めるといった形が多いです。例えば資本金300万円であれば、発行済株式総数は300株といった感じです。
しかし、この場合その後不都合が生じる場合があります。それは新たに出資を受けようとするときです。例えば新たに2,000万円の出資を受けようとして、新たに既存の株式の10%を発行しようとする場合、上記の例だと発行する新規株式は30株です。これだと最大30人までしか出資が受けられませんし、何よりも1株当たりの単価が大きくなってしまいます。(この例だと2,000万円/30株=約66万円)
もし、会社設立時に単価100円で30,000株発行だった場合はどうでしょうか?この場合は2,000万円の出資で発行する株式は3,000株となります。この場合の単価は約6,600円です。つまり発行済株式総数が細分化されているほどに、新規で株式を発行する際に、より柔軟に発行数や単価を決めることができるということになります。
上記のように発行済株式総数を細分化することにはメリットがありますが、もし会社設立時の発行済株式総数が細分化されていなければその後に細分化することも可能です。これが株式分割の手続きです。
株式分割は、株式の種類ごとに分割割合に応じてその種類の株式を株主に交付する手続きです。例えば、1株につき100株を交付すると決めれば、300株持っている株主は株式分割後30,000株を保有することになります。
株式分割の手続き
株式分割を行うには株主総会の普通決議(取締役会設置会社では取締役会の決議)で行うことになります。決議する内容としては、
1)分割割合と基準日
2)株式の分割の効力発生日
3)株式会社が種類株式発行会社である場合には、分割する株式の種類
の3つです。決議した基準日に株式を保有している株主が対象になるということになります。
また、株式分割をすることで、発行可能株式総数が足りなくなることがあります。株式分割で発行済の株式総数は増えますが、自動的に発行可能株式総数が増えるわけではないからです。そこで、会社法では以下のように定められています。
|
つまり、普通株式のみを発行している会社については、株主総会の決議を経ずに分割割合に比例させて発行可能株式総数を変更させることができるということになっています。1株を100株に分割する場合は、発行可能株式総数も100倍までは株主総会の決議を経ずに増やすことができるということです。もちろん、株式分割について決議するついでに株主総会で発行可能株式総数の増加についても決議しておくことも可能です。
また株式分割を行えば少なくとも発行済み株式総数は増加しますので、その旨の登記は必要となります。
この記事の執筆者
-
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
最新の投稿
- 会社法2024年10月29日疑似外国会社とは
- 会社法2024年10月27日合同会社の社員の入退社に伴う定款の書き換え、変更は必要?
- 会社法2024年10月25日持分の払戻しが発生する場合の合同会社の社員の退社の効力発生日
- 会社法2024年10月23日会社設立の際の1株当たりの単価はいくらにすべき?