コラム

事業目的に書いておけば経費で計上できる?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

事業目的は計上できる経費の幅に関係する?

定款に記載する事業目的は、その名の通りどのような事業を行うのかということを記載するものです。そこで、事業目的の範囲外の行為を行うことについては問題ないのかといったことについて気になることが多いですが、一方で事業目的に記載しておけばその事業を行っているものとして扱ってもらえると考えている人もいるようです。

例えば、事業目的に「ペットのブリーディング」と書いておけばペットのご飯代や病院代などを経費で落とせるといったことです。この考え方の裏には、事業目的に書いておけばプライベートな支出も経費として計上できるだろうという思いがあるのでしょう。

事業目的と税金計算上の経費の範囲は無関係

結論から言えば、このようなことは一切ありません。この考えは税務署を相手として事業目的の記載をもって経費を主張しようという考えですが、そもそも税務署は事業目的などほとんど(一切?)気にしていません。

事業目的は、投資家や金融機関その他の取引先がその会社の概要を知るための情報の一つです。申告された数字から情報を読み取る税務署にとっては登記された事業目的の内容はほとんど気にも留めていません。それよりはホームページやSNS、税務調査時のヒアリングなどをもとに事業の概要を把握しています。

たとえ「飲食店の経営」という事業目的が入っていない会社が飲食店を経営していたとしても税務署は気にしません。税務署が行う調査の目的は、その会社の税金が正しく計算されているかどうかということ、その一点に尽きます。

いくら事業目的を書き並べても、実態としてその事業運営とは無関係な経費だと判断されれば経費として計上することは認めてもらえないでしょう。逆に、事業目的に入っていない事業に関する経費でも、実態としてその事業を会社で行っているのであれば、その事業のための経費は計上しても税法上全く問題ありません。

少なくとも、もし税務調査の際に経費に算入するかどうかという議論になったとき、事業目的の記載をその論拠にすることはできません。あくまで、どのような事業活動のために支出して、その結果どのように事業に活きているのかといったことを説明する必要があります。

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

関連記事

新着コラム

  1. 合同会社では、利益分配のほかに社員に対して払い戻す方法として、持分の払戻しと出資の払戻しがあります。
  2. 会社で社用車を固定資産として計上するには「車検証の名義が会社でなくてはいけない」ということが言われま...
  3. 定款のサンプルを見ていると、よくお金を表示する前に「金」という言葉が付いていることがあります。
  4. 株式の譲渡所得や配当所得を確定申告するとふるさと納税の限度額も上がる毎年年末になると、多くの...
  5. 合同会社は、株式会社のように不特定多数の株主からお金を集めるのではなく、出資者兼経営者である社員によ...
ダウンロードはこちら