本店所在地とは、登記上の会社の住所です。起業家にとっては本社と思っていただいて大丈夫です。(大手企業では地方にメインの工場などをもちつつ、登記上の本店は東京都という場合もあります。)登記上の本店所在地を決めるには、まずはどこを拠点として事業を行うのかとイメージしましょう。
①自宅兼オフィスの場合
起業当初は自宅をオフィスとして使用する場合もあります。自宅オフィスの場合は、次の点に注意しましょう。
賃貸住宅の場合 | 賃貸借契約書で事業目的の使用が原則禁止されている場合、その部屋を本店として登記してよいかどうか、必ず不動産業者または大家に確認。 |
分譲マンションの場合 | 賃貸と同様に、事業目的での使用が禁止されている場合は、管理組合へ確認。 |
更に、住宅ローン控除を受けている場合は、事業用にすることで適用を受けられなくなる場合があったり、許認可が必要な事業については、場合によっては大家さんや管理組合の同意書の提出を求められるなど、許認可への影響が出たりする可能性があります。
さらに、国税庁法人番号公表サイトでは、会社名と本店所在地が誰でも検索できますので、自宅の住所も検索されることになります。(代表者名まで公表されているわけではないので、代表者名と住所が紐づけられるわけではありませんが。)
②賃貸オフィスの場合
次に、自宅以外でオフィスを構える場合について見ていきます。
会社設立をする際に、事業拠点を決めるポイントは次の5つです。
立地、イメージ | 飲食店など立地そのものが事業の盛衰に関わるビジネスでは、効率よく集客できる地域を選ぶ必要があります。また、「○○の聖地」のような住所自体のイメージを戦略的に利用することも考えられます。 |
賃料 | 創業したてでは、オフィスの賃料は大きな負担となります。店舗や事務所を借りる場合には、資金繰りの面から無理のない範囲で決める必要があります。 |
バーチャルオフィスは極力回避 | 各種詐欺などの犯罪防止の観点から、銀行口座の開設時には厳しい審査がされます。特にバーチャルオフィスが本店の場合、口座開設を断られる可能性が高いです。実際にバーチャルオフィスは一切NGという金融機関もあります。 |
郵便物の受け取り | 税務や社会保険に関する書類は、原則として登記上の本店住所に届きます。本店住所での受け取りが難しい場合は、転送届を出しておきましょう。ただし、転送不可のものもあるのでご注意を。 |
許認可 | 許認可が絡む業種については、面積やオフィスの作りなどで規定が設けられている場合があります。 |
事業拠点が決まれば、次は登記上の表記を決めます。表記の方法は、次のようなものが考えられます。
①東京都新宿区新宿●丁目●番●号(ビル名なし、部屋番号なし)
②東京都新宿区新宿●丁目●番●-101号(ビル名なし、部屋番号あり)
③東京都新宿区新宿●丁目●番●号▲▲ビル(ビル名あり、部屋番号なし)
④東京都新宿区新宿●丁目●番●号-101号▲▲ビル(ビル名あり、部屋番号あり)
登記事項証明書、いわゆる登記簿謄本は、取引先などに提出する場合もあります。イメージなども考えて表記方法を決めましょう。しっかりとオフィスを構えているということを前面に出したい場合は、オフィスビルの名前を含めたほうが印象もよいでしょう。また、自宅を本店所在地とする場合には、極力情報を公表したくないでしょうから、ビル名なし、部屋番号なしがよいでしょう。戸建だと住所と同じになってしまいますが、さすがに番地まで省略することはできませんので、この表記が最小限となります。
特に飲食店などの店舗系ビジネスでは、立地は成功のための重要な要素の一つです。お気に入りの物件を見つけるためには、多くの物件を見る必要があります。そのためには、不動産会社を選ぶのも重要なポイントです。不動産会社は、サイトで得られる情報の何倍もの情報を保有しています。そのため、店舗探しでは、かならず不動産会社のサポートが必要です。不動産会社を選ぶ際は、単に近くにあったからというだけでなく、過去の実績を確認するなどして、起業時の重要な店舗探しを任せられるかどうかを判断しましょう。