いつも使用している金融機関の口座について、金融機関側から口座の入出金をストップ(凍結)する旨の連絡があり、再度使用する場合は再審査が必要という連絡を受ける企業があります。
通常であれば銀行口座が突然使用できなくなるということは考えられませんが、一定の事由に該当した場合は口座が凍結されるということもあり得ます。
最もあり得そうな理由としては税金や社会保険料を滞納していることによる税務署や年金機構による口座の差し押さえです。また、債権者からの申立による口座の差し押さえの可能性もあります。
しかし、こうした差押されるような滞納や未払いがないにもかかわらず、金融機関が口座を凍結するケースもあります。それが銀行取引約款に基づく停止です。
金融機関に普通預金口座を開設するということは、もう少し法的にいえば金融機関と口座開設者の間で消費寄託契約の一種である預金契約を締結しているということになります。預金契約の下では預けたお金(預金)は金融機関が自由に使うことができます。ただし、預金者が引き出しを求めた場合には、同額を返還する義務があります。
つまり、口座を開設する際には金融機関と契約をしているわけですが、この際は金融機関が一方的に作った契約条項(約款)が適用されます。そして、この約款には、さまざまな契約条項が記載されています。口座開設するときにこの約款を全文熟読する人は相違ないと思いますが、約款には預金契約の解除についても定められています。
約款には、口座開設時や口座情報の更新時に虚偽の内容を申告した場合や、連絡が取れない場合、一定期間の利用がない場合など様々な理由によって金融機関の判断によって取引を停止、制限できる旨が定められています。
突然口座取引が停止、制限される主な理由としては以下のようなものが考えられます。
- 違法な取引の疑いがある場合
マネーロンダリングやテロ資金供与防止に関連する法律(例:犯罪収益移転防止法)に基づき、不正取引の可能性がある場合に銀行は口座を凍結することが認められています。 - 取引状況に異常がある場合
例えば、突然の高額取引や不自然な入出金が続く場合、銀行は口座の利用停止や調査を行うことがあります。 - 口座名義や登録情報の不一致
法人名義や代表者情報に変更があったにもかかわらず、銀行に報告していない場合、銀行は口座利用を制限できる権利を有します。 - 法人情報の更新未対応
銀行が定期的に求める情報更新(取引時確認など)に対応していない場合は口座が止められることがあります。
約款は金融機関が一方的に作った契約条項とはいえ、口座名義人は約款を守って取引をする必要があります。約款に違反すれば口座を凍結するということは金融機関側の権限として約款に明記されています。
こうしたことを踏まえて、もし口座が凍結されれば、まずは銀行に連絡を取ったうえで、リカバーできるかどうかについて確認することが重要です。(ただし、ケースによっては約款のどの部分に違反しているのかについて確認が取れないケースも多いので、リカバーが難しいケースもあります。)
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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