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認証後の定款は修正できる?修正の方法3パターン

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株式会社の設立には公証人による定款の認証が必須です。そして株式会社の定款は、公証人による認証を受けることで効力が発生します。

会社法 第30条
  1. 第26条第1項の定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じない。
  2. 前項の公証人の認証を受けた定款は、株式会社の成立前は、第33条第7項若しくは第9項又は第37条第1項若しくは第2項の規定による場合を除き、これを変更することができない。

第37条第1項若しくは第2項:定款に記載した発行可能株式総数を変更する場合

第33条第7項若しくは第9項:変態設立事項について、裁判所の変更決定があった場合

こうしていったん効力が発生した定款は、そのままの内容で法務局に提出して、会社の登記が行われることになります。

しかし、いったん認証を受けた定款について、会社設立の登記を申請する前、もしくは登記申請後に誤字脱字や内容の誤りに気付くことがあります。

そんなとき、対応方法には3パターンあります。

1)新たに定款を作成して、再度公証人の認証を受ける
2)訂正に係る箇所について発起人全員の同意書を作成して、その書面について公証人の認証を受ける
3)発起人から誤記証明を交付してもらう

このうち、1)、2)については公証人に再度手数料を支払う必要がありますが、3)であれば費用は掛かかりません。しかし、誤記証明とはいったん公証人が認証した定款に誤字脱字や法的な記載の誤りがあったことを証明する書類です。つまり公証人が定款認証の際に見落としたことを意味します。そのため、明らかに誤りであるケースを除いて、通常は誤記証明の交付を受けることは原則としてできません。

例えば、本店を「東京都港区」で登記したかったのに、間違って「東京都渋谷区」と記載して定款認証を受けた場合、これは表面上は誤記ではありません。そのため、本来であれば定款の再認証、もしくは発起人全員の同意書の認証ということになります。(いずれにしても誤記証明での対応が可能かどうか公証役場への確認をしてみることになります。)

しかし、パターン1)や2)の場合、いったん登記申請した後に差し替えるということはできないことになっています。定款について公証人の認証が完了した後に株式会社設立の登記申請をするという流れがある以上、もし登記申請後に誤記証明で対応できない修正が発生した場合には、いったん登記を取り下げて認証後再度申請ということになります。もし設立日にこだわりがあったとしても、この場合は仕方ないので設立日も当初の予定からズレてしまいます。

まとめると、いったん認証を受けた定款の修正については以下の通りです。

修正方法 費用 ケース タイミング
新たに定款作成して認証 定款認証と同じ 修正箇所が多く、再認証したほうが良い場合 登記申請前のみ
修正箇所について発起人全員の同意書を作成して認証 23,000円 商号や目的など変更箇所が特定できる場合 登記申請前のみ
誤記証明 無料 明らかな誤りがあり、公証人が見落とした場合 登記申請前と後いずれも可

いずれにしてもいったん認証を受けた定款を変更するのは非常に手間がかかるので、司法書士などの専門家に依頼して間違いのない定款を作成することをオススメします。

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

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