設立時役員の選任は2パターン
設立時役員(設立時の取締役や監査役など)は、会社設立の登記の内容の一つです。この設立時役員の定め方については、2つのパターンがあります。
1)定款で直接定める方法
2)定款の作成後に発起人の過半数の一致によって定める方法
1)の場合は、定款に直接設立時役員を記載するので、設立時役員の選任について別途発起人の過半数の一致を証する決定書を作成する必要がないという点があります。
ただし、定款に直接設立時役員を定めた場合、各設立時役員の就任承諾書は必要です。定款で選任されたことを承諾する意思表示を以て、会社と役員の間に委任契約が成立するためです。
この場合は、発起人全員の出資の履行が完了した時点で、設立時役員に選任されたものとみなされますので、就任承諾も出資の履行完了後に行います。
2)の場合は、定款には設立時役員を記載せずに、別途発起人の過半数の一致によって設立時役員を選任する方法です。
この場合は、発起人全員の出資が完了してからの選任となります。「発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時取締役を選任しなければならない。」という形で会社法に定められているためです。出資が完了しないうちに設立時役員を発起人の過半数の一致で定めても、その選任決議は無効です。
2)のパターンでは、登記の際に、定款のほかに発起人の過半数の一致を証する書面が必要となります。さらに設立時役員の就任承諾書も別途必要になりますが、この点については、発起人の過半数の一致を証する書面に、被選任者が発起人であり、かつ就任を承諾した旨の記載をしておくことで就任承諾書を省略できます。
それぞれのパターンで注意すべき点
1)のパターンでは定款で直接設立時役員の氏名を登記することになります。つまり、そのまま定款の認証を受ければその内容で確定することになります。そのため、その後役員構成を変更したいといった場合には、改めて定款認証を受けるか、発起人の同意書について認証を受ける必要があります。いずれに追加で費用が掛かります。
また、定款変更の手続きをしない限り、設立時役員の記載が定款に残り続けるので、設立時役員が去った場合などには、どこかのタイミングで定款変更のための株主総会を開くことになるかもしれません。(辞めた人間の名前が定款に残っているのを避けるため。)
一方、2)のパターンでは、発起人決定書で設立時役員を定めることになりますので、柔軟に役員構成を決められる反面、設立時役員を別途決める手間が生じます。
結局設立時役員の選任方法はどれがよい?
それではどちらのパターンが良いのかという点ですが、株主兼設立時役員1名といった選択肢がないようなケースを除いて、基本的にはパターン2の発起人の過半数の一致で定めるパターンのほうがおすすめです。こちらの方が定款認証後に設立登記を申請するまでの間に役員構成を柔軟に決めることができますし、定款に直接設立時役員を定めるのに比べてそれほど登記用の書類が増えるわけではありません。
定款のひな型はいろいろなところで入手できますが、記載されている内容をそのまま使用する必要はありません。内容に疑問があれば司法書士に相談するなどして無駄なく会社設立の手続きを進めましょう。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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