外国会社の日本における代表者と契約締結代理人の違い
外国会社の日本における代表者とは、以下のように定められています。
会社法 第817条
外国会社は、日本において取引を継続してしようとするときは、日本における代表者を定めなければならない。この場合において、その日本における代表者のうち一人以上は、日本に住所を有する者でなければならない。
2 外国会社の日本における代表者は、当該外国会社の日本における業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
|
上記の条文から2つのことが読み取れます。
1)外国会社の日本における代表者は外国会社の日本における業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有すること
2)日本における代表者のうち、1人以上は日本に住所を有していなければならないこと
このように、日本における代表者は一切の裁判外の行為をする権限を有するということは、もしかしたら日本に住所を有する日本における代表者は恒久的施設(PE)に該当するのではという気がしてしまいます。なぜなら、恒久的施設に該当するケースの一つとして、「非居住者又は外国法人が国内に置く自己のために契約を締結する権限のある者その他これに準ずる者で政令で定めるもの」が定められているためです。
日本における代表者は、株式会社の代表取締役のように契約締結などの業務に関する一切の行為をする権限を有しているとなっていますので、まさに恒久的施設の「契約締結代理人」に該当するように思えます。
しかし、実際には日本における代表者の権限には制限を加えることができますので、恒久的施設における契約締結代理人には該当しないケースもあります。
会社法上の外国会社における日本に住所を有する代表者は取引の安全性を目的としているのに対して、税法上の契約締結代理人は、物的な場所がなくても事実上日本国内で事業を行っていると考えられる場合に日本側で課税できるようにするための考え方です。
それぞれの目的が違うわけで、恒久的施設の契約締結代理人に該当するかどうかは実体で判断すればよいということになります。そもそも外国会社の日本に住所を有する代表者が即恒久的施設と扱われるのであれば、すべての外国会社が日本で課税される可能性が出てくるといった問題も生じます。
いずれにしても、会社法と税法ではその目的や趣旨が異なるので、外国会社としては、外国会社の登記をしたこと以外にも、日本での契約締結代理人が実態として存在するかどうかということを検討したうえで、日本での恒久的施設の該当性を判断すればよいでしょう。
この記事の執筆者
-
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
最新の投稿
- 税務会計2024年11月28日赤字法人を合併した場合の欠損金の引継ぎは可能?
- 会社法2024年11月26日合同会社の資本金減少の効力発生日はいつ?
- 会社法2024年11月24日株式会社の解散登記で定款添付が必要な理由
- 会社法2024年11月20日合同会社で出資の払戻しをするときの金額の限度額規制