現物出資は登記後にも手続きが必要
現金以外での出資の方法を現物出資といいます。現物出資は、個人事業主が法人成りした際の在庫や内装工事などの引き継ぎや、自家用車や不動産、株式などの有価証券、他者への債権(売掛金や貸付金など)など金銭的に価値を評価できるものが現物出資の形態として利用されています。(合名会社や合資会社の無限責任社員については例外あり。)
現物出資をする前には検査役の選任の有無や、いくらで評価すべきかといった検討事項がありますが、現物出資を実行した後にも手続きが必要な資産があります。在庫などであれば帳簿の数字を付け替えるだけといったこともありますが、一部の資産には公的な手続きを取る必要があります。
1)不動産
土地や建物などを現物出資した場合には、登記上の所有者を変更する登記(所有権移転登記)を申請する必要があります。法律的な話をすれば、所有権移転の登記をしていなくても現物出資としては有効であり、固定資産として会社に計上することも問題ありません。
しかし、現物出資した以上は、所有者が会社であることを登記によって公示すべきであり、登記で公示して初めてそのことを第三者に主張できます。現物出資した不動産の減価償却の計上を正当に主張するためにも、登記によって費用はかかりますが、現物出資による所有権移転の登記は必ず行うようにしましょう。
専門家に依頼する場合は、登記の専門家である司法書士に依頼することになります。
2)自動車
自動車を現物出資した場合には、陸運局で車検証の名義変更の手続きを行う必要があります。不動産登記は相続登記でもない限り義務づけられているわけではありませんが、自動車の名義変更は道路運送車両法という法律によって義務付けられてます。
自動車を現物出資した場合には、15日以内に車検証の名義変更手続きを行わなければいけません。
専門家に依頼する場合は、行政手続きの専門家である行政書士に依頼することになります。
3)株式などの有価証券
株式などの有価証券を現物出資した場合には、その名義変更手続きが必要です。上場している株式などを現物出資した場合には、証券会社で新たに法人口座を開設し、その口座に有価証券を移す必要があります。
非公開会社の株式を現物出資する場合には、あらかじめ発行した会社の承認を受けておく必要があります。
4)知的財産権
特許権などの知的財産権も現物出資の対象にできます。これらを現物出資した場合には、知的財産権を所有している者の名義を変える必要があります。
専門家に依頼する場合は、知的財産権の専門家である弁理士に依頼することになります。
もし現物出資を絡めた会社設立の登記から、その後の手続きまでを一括して依頼したいといった場合には、当事務所のようにまとめて対応できるところに依頼することをオススメします。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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