コラム

自家用車の現物出資と、かかってくる税金

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現物出資と登記や登録

会社設立時や増資のさいに現物出資を行う場合、対象となる資産には、個人保有の不動産や在庫などの動産、自動車などの固定資産や、株式などの有価証券があります。

現物出資の対象となる資産は幅広いですが、中には登記や登録が必要な資産もあります。しかし、登記にしても登録にしても、会社の登記事項証明書が必要となります。そのため、会社を設立する際に行った現物出資については、会社設立の登記が完了したあとでないと、登記事項証明書が入手できないため、登記や登録作業を会社設立前に行うことはできません。

そこで、会社法では以下のように定められています。

第34条
  1. 発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込み、又はその出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければならない。ただし、発起人全員の同意があるときは、登記、登録その他権利の設定又は移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることを妨げない。

このように、登記、登録については、株式会社の成立後でもよいということになっています。発起人全員の同意が必要となっていますが、実務上登記事項証明書がないと進められない手続きばかりなので、登記や登録はどうしても会社設立後の手続きになってしまいます。

登記や登録が必要な現物出資資産

現物出資で、登記や登録などの手続きが必要となる資産としては以下のものが考えられます。

土地や建物 所有権移転の不動産登記
自動車 車検証の所有者の変更
上場株式などの有価証券 会社名義の証券口座への移管手続き
売掛金などの債権 債権譲渡の登記
特許権などの知的財産権 特許庁への届け出など

中でも多いのが、自家用車を社用車に転用するケースや、持っている株式を会社口座に移管するケースです。特に今回は、社用車について見ていきます。

社用車の現物出資と個人側の税金

社用車については、登記完了後、管轄の陸運局で車検証の所有者の名義変更が必要です。この手続き自体は特に期限は設けられていませんが、現物出資で会社の所有物になっている以上、速やかに行いましょう。

自動車ローンが残っている間は、通常はローン会社の所有になっているので現物出資はできないことに注意しましょう。

自家用車を現物出資する際にもっと重要なのは税金関係です。自家用車を現物出資するということは、設立する会社に対して車を売却して、その対価としてお金の代わりに株式を取得するということです。そのため、現物出資をする側で、所得税の問題が生じます。

自家用車を売却した場合、その車をどのように使っていたかということで所得税の扱いが変わります。

主として通勤用 生活用資産の売却として非課税
主としてレジャー用 譲渡所得として課税

同じ車でも、例えば地方で車がないと暮らしていけないような車社会で主に通勤用で使っていた車を現物出資すれば個人側は非課税ですが、休日に余暇を楽しむために所有しているような車であればレジャー用として所得税が課税されます。

しかし、現物出資の評価額を調整することで譲渡所得を課税せずに、車を現物出資することも可能です。譲渡所得は、買値、現物出資では株式の取得対価つまり現物出資額と、購入金額の差です。ただし、購入金額は減価償却を行った後の金額となります。

この自家用資産の減価償却費は少々特殊です。譲渡所得は、以下の計算式によって計算します。

譲渡所得=現物出資額ー(購入金額ー購入金額×0.9×(法定耐用年数×1.5倍)×保有年数)

※保有年数は6か月未満切り捨て、6か月以上は切り上げ

上記の金額で計算した金額が、自家用車を現物出資した場合の譲渡所得となります。ただし、譲渡所得は50万円まで非課税なので、上記金額で計算した金額が50万円以下ならば確定申告は不要となります。つまり、上記の金額が50万円以下になるように現物出資額を設定すればよいのです。実際には、よほどの高級車でなければ、上記で計算した現物出資額は、実際に中古車で売られている金額とそれほど乖離しないケースがほとんどです。ちなみに、現物出資額が500万円を超えると、検査役の選任が必要となるケースがあるので、特に会社設立時の現物出資の金額には注意しましょう。

 

また、現物出資を受けた会社側では中古資産の取得として扱われます。その場合の耐用年数は、主に以下の計算式が用いられます。(簡便法)

耐用年数
=(法定耐用年数ー経過年数)+経過年数×20%
=法定耐用年数ー経過年数×80%

計算した結果1年未満の端数が出れば切り捨てます。

この場合の経過年数は月ベースで計算します。例えば、法定耐用年数6年の車で、経過年数が3.5年であれば、6ー3.5×80%=3.2年→3年が耐用年数となります。

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

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