みなし解散と事業年度
株式会社では、重任の登記を怠るなど12年間登記が行われずに放置されている場合、一定の要件のもと法務局の職権によるみなし解散が行われます。
みなし解散はその名の通り「解散」です。「みなし」とは本来違うけど法律的はその名の通りに扱うこと、つまり正式に株主総会などで解散の決議は行っていないけど、会社法の規定に従って解散したものと法律上取り扱うことです。
そして解散すれば法人税法上は一つの事業年度が終わったものと取り扱われます。そのため、法人税の申告が必要となります。これは通常の解散でもみなし解散でも同じことです。
そしてさらにもう一つ、みなし解散を解除するために会社継続の登記を行った場合、その継続日の前日でさらにもう一つ事業年度が終了してしまうということが法人税法で定められています。
一例に、3月決算の株式会社が12月14日にみなし解散による職権の登記が行われた場合を考えてみます。その後すぐにみなし解散に気が付いて、12月31日に会社継続の決議をして登記をした場合、まずはみなし解散日でいったん事業年度が終了し、会社継続の前日でさらに事業年度が終了します。
そのため、
1回目:4月1日~12月14日(みなし解散による事業年度終了)
2回目:12月15日~12月30日(会社継続による事業年度終了)
3回目:12月31日~3月31日(通常の事業年度終了)
つまり、1年間に計3回も法人税申告しなければならないということになります。みなし解散でいったん事業年度が終了することはやむをえないとしてもさすがに3回も決算を行うのは手間です。
みなし解散からの会社継続の日付はいつがよい?
それなら最も手がかからないのは、みなし解散を行った日の翌日に会社継続をすればよいということになります。これなら会社継続の日の前日=解散日となりますので、両方を兼ねた申告1回で済むということになります。上記の例であれば、12月15日に会社継続すればよいということになります。
それであれば
1回目:4月1日~12月14日(みなし解散による事業年度終了兼会社継続による事業年度終了)
2回目:12月15日~3月31日(通常の事業年度終了)
となります。
もちろん会社継続には株主総会の決議が必要ではありますが、そのあたりは特に中小企業では日付の設定を含めて実利的に考えていく必要があります。
みなし解散からの会社継続については登記だけではなく税務も絡む複雑な事案ですので、司法書士だけではなく税理士にもしっかりと相談して進めるようにしましょう。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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