会社で社用車を固定資産として計上するには「車検証の名義が会社でなくてはいけない」ということが言われます。それでは車検証を見てみると、2つの名義があることが分かります。所有者と使用者です。
車検証には所有者と使用者が記録されています。今では車検証が電子化されたため、紙で渡される車検証には所有者が記載されていなくて、使用者だけが確認できるということもありますが、マイクロチップを読み込めば「所有者」を確認することができます。
それでは、「車検証の名義が会社」というのはどういったことを指すのでしょうか?これはつまり、車が会社の所有物であれば会社で固定資産として計上して減価償却費が計上できるということを意味します。つまり、「所有者」が会社である必要があるということです。
項目 | 所有者 | 使用者 |
---|---|---|
定義 | 車両の法的な所有権を持つ者 | 実際に車両を使用・管理する者 |
車検証の記載位置 | 「所有者」の欄に記載 | 「使用者」の欄に記載 |
内容 | 車両の資産としての所有権をもち、 売却や譲渡の決定権を持つ | 車両の運行・維持管理を行う |
例 | – 車の購入者 – ローン会社やリース会社(ローンやリース中の場合) |
– 実際に車を運転する人 – 企業の場合は従業員や役員、または会社そのもの |
特記事項 | -実質的な所有者が会社でも、ローン中の場合はローン会社が所有者となり、完済後に名義変更が可能 | -使用者が実際に管理していれば、ローンを完済していない状況でも従業員や役員が使用者となれる |
このように、所有者と使用者は異なっていて、「所有者」が会社になっているかどうかで社有車として固定資産計上できるかどうかが関係してきます。
ローンを組んでいる場合
少々ややこしいのが、ローンで社用車を購入した場合です。この場合、車検証の名義には一般的に会社ではなくローン会社が記録されます。これは、ローンを完済するまでは車両そのものを担保として所有権をローン会社に留保して、万が一ローンが完済できない場合は車両そのものを回収したり、ローン返済前に勝手に車両が売却されることを防ぎます。
これは実際の所有者は会社ですが、担保としての役割を果たすためにローン会社が所有者として記録されているということになります。(所有権留保)不動産に当てはめれば所有者は会社ですが、抵当権者としてローン会社が登記されているという状態に近いです。ただし、車にはこのような抵当権という概念が存在しないので、車検証の所有者をローン会社にすることで対応しているということです。
そのため、実質的な所有権が会社に帰属していれば、ローン会社に所有権留保されていたとしても車両を固定資産として計上し、減価償却費を計上可能です。ただし、この場合は車両の売買契約書などで、完済後、所有権が会社に移転することが明記されていることや、車両の使用権や管理責任が会社(または会社の役員や従業員)にあることが明示されていることが必要です。
結局、会社で車両を固定資産として計上できるのは以下のようなケースです。
1)会社が所有者として車検証に記録されていること
2)ローン会社が所有者として車検証に記録されているが、ローン完済後は会社に所有者を変更できるようになっていること
使用者欄が会社や役員、従業員になっているだけでなく、上記を満たしているかどうかをしっかりと確認しておきましょう。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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