コラム

不動産管理会社の管理委託方式の特徴や導入で注意すべきポイント

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不動産管理会社の管理委託方式とは

不動産管理会社の収益の計上方法には主に以下の3つのパターンがあります。

運営方式 内容
管理委託方式 所有者である不動産オーナーが不動産管理会社に管理業務を委託する方式。
一括賃貸方式 不動産管理会社がオーナーから物件を一括で借り上げ、自ら賃貸業者として運営する方式
不動産保有方式 不動産管理会社が物件を所有者である社長から所有権移転を受け、自ら所有する方式。

このうち、管理委託方式についてポイントを説明します。

社長個人が保有している不動産の管理のために設立した不動産管理会社で管理委託方式による収益計上を行うために行うべき動きとしては以下の通りです。

1)社長個人と不動産管理会社の間で管理委託契約を締結

不動産保有方式と異なり、管理委託方式の場合は不動産の所有権は社長個人のままです。不動産管理会社の収益としては賃貸不動産の管理業務を社長個人に対して行うことによる管理収入です。

不動産の管理業務とは一般的に次のような業務です。

業務の種類 具体的な業務内容
賃貸の管理 入居者募集:賃貸物件の広告掲載、内覧対応、入居希望者の審査など
契約手続き:賃貸借契約書の作成・締結、保証会社の利用手続きなど
家賃管理:家賃の請求・回収、滞納者への対応など
建物の維持管理 設備の維持管理:エレベーター、給排水設備、空調設備の点検・修理・交換
清掃業務:共用部分の清掃、ゴミ処理の管理
防犯・防災対策:防犯カメラの設置・監視、火災報知器の点検、避難訓練の実施
メンテナンス 定期点検:建物の定期的な点検を行い、劣化箇所の修繕を計画
修繕工事:外壁補修、内装の改修、設備の更新など
収支管理 会計業務:収入と支出の管理、経費の精算
収益最大化:賃料の見直し、空室対策、コスト削減の提案
賃借人とのコミュニケーション 入居者対応:入居者からの苦情・要望の受付、トラブル対応
オーナーとの連絡:物件の状態報告、管理方針の相談、重要事項の連絡
賃貸契約の管理 契約更新:賃貸契約の更新手続き、条件の見直し
解約手続き:退去時の手続き、敷金の精算、原状回復工事の手配
賃貸上のリスク管理 保険の手配:火災保険や地震保険の加入手続き
法令遵守:建築基準法や消防法などの法令に基づいた管理

主には宅建業の免許を持っている不動産会社などが行うことが多いですが、賃貸物件の管理業務自体は免許が必要なわけではないので自ら設立した不動産管理会社で行っても問題はありません。

管理委託方式のメリットやデメリット

管理委託方式では、不動産保有方式のように所有権移転登記だったり、譲渡による所得税の考慮だったりといったことが必要ありません。そのため、管理委託方式の導入は個人による不動産収入と、契約主体となる不動産管理会社の設立さえ済んでいれば導入は非常に容易です。

一方で、不動産保有方式のような所得の分散効果は少ないです。管理委託方式では一般的に賃料の〇%ということで管理料、つまり不動産管理会社にとっての売上を決定することになります。相場的には3~多くても15%程度が多いようです。年間1,000万円の賃貸収入があり、管理料を10%としても個人から法人に移る所得は100万円にすぎません。

そのため、資産管理会社の役員(合同会社であれば社員)を複数名置いて、上記の管理業務についてそれぞれの業務分担を行って、複数人に対して役員報酬を支払うことで多少なりとも不動産所得を給与所得に代えて給与所得控除のメリットを最大限活用するといった方法が考えられます。

管理委託方式で重要なのは管理料の設定

管理委託方式の導入では管理料の設定、つまり家賃の何パーセントを管理料とするかということが重要です。管理料が多すぎれば「同族会社の行為計算の否認」の対象になる恐れがありますし、少なすぎれば本来の目的であった所得の分散効果をほとんど享受できません。

 

不動産管理会社を設立して、社長個人の不動産を会社に移転したい場合はお気軽に当事務所までご相談ください。

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

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