支配人とは?
会社の役員といえば取締役や代表取締役、合同会社でいえば業務執行社員といった名称が思い浮かびます。しかしこれ以外のポジションとして会社法では「支配人」という立場もあります。支配人は役員ではありませんが、支店など特定のエリアにおいて役員並みかそれを超える権限を持つポジションです。
支配人については、会社法では以下のように定められています。
会社法 第10条 会社(外国会社を含む。)は、支配人を選任し、その本店又は支店において、その事業を行わせることができる。
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支配人という肩書そのものを社内に設けている会社はほぼないかもしれませんが、例えば大企業の支店長や営業所長などのように雇用などについて広範な権限を持っているような人が会社法上の「支配人」となります。ほかにも、以下のようなケースで支配人の設置を行います。
・海外在住の人が国内で会社設立をしようとしたときに、日本における責任者として支配人の登記を行う
・融資や補助金などを受けるために本社以外の自治体に支店登記した場合で、その登記した支店に自治体とのやり取りを行うための支配人の登記を行う
実際に、東京に本店がある会社が地方に支店登記して融資を受けようとした際に、支配人の登記も合わせて求められたというケースもあります。
支配人の選任方法
支配人の選任は、必ず取締役の過半数の一致(取締役会設置会社では取締役会の決議)によって行うことになっていて、支配人の決定を各取締役に委任することはできません。
会社の取締役が支配人を兼務することは可能ですが、代表取締役や代表社員が支配人を兼務することはできません。なぜなら代表取締役は以下のように支配人同様に一切の行為をする権限を持っていて、さらに支配人のようにエリアが決められた権限ではなく会社全体の権限であり、その意味で代表取締役という時点で支配人を超える権限を有しているためです。(支配人が代表取締役や代表社員に就任した場合には、支配人の登記を抹消する登記も同時に申請しなければいけません。)
会社法
第349条
取締役は、株式会社を代表する。ただし、他に代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合は、この限りでない。
(中略)
4 代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する。
5 前項の権限に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
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支配人の登記
会社が支配人を選任した場合には支配人の登記が必要です。支配人の登記には、支配人の住所・氏名のほかに「支配人を設置した営業所の所在地」を登記する必要があります。これは支配人は特定のエリアだけで代表取締役ばりの権限を発揮するため、その範囲を明確にする必要があるためです。
もちろん支配人として登記されていたとしても、その実態が「支配人」とは呼べない、つまり名ばかり支配人であれば、その登記は意味を成しません。支配人を選任するために支配人の就任承諾書は必要ないため、取締役の決定(または取締役会の決議)だけで支配人は選任できます。しかしその支配人のポジションに中身が伴っていない場合は、その登記も無効ということです。ちょうど残業代削減のための「名ばかり管理監督者」が無効であるのと同じ感じです。
なお支配人の登記は役員の登記ではないため、登録免許税は3万円かかります。(役員の登記のように資本金1億円以下の場合は1万円というわけではありません。)
また、支配人は独自に法務局に印鑑登録することもできます。
支配人の登記をお考えの会社様はお気軽に当事務所にご相談ください。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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