コラム

代表取締役の住所変更と重任登記の関係

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代表取締役の住所変更と重任登記の同時申請

代表取締役については、氏名のほかに住所も登記されています。会社の業務に関する責任を代表取締役が負うことから、代表取締役については「誰」だけではなく「どこに住んでいる」まで公示することで、利害関係者等にとって登記記録の利用価値を向上させています。

代表取締役が引っ越しをするということは特に都市部を中心によくあると思いますが、引っ越しをしたけど代表取締役の住所変更の登記をしないまま任期満了を迎えてしまうということもしばしば起こってしまいます。

この場合、重任登記の前提として代表取締役の住所変更の登記を申請する必要があるのかという問題があります。実際には、重任前の登記上の住所と現住所が異なっていても、現住所でダイレクトに重任登記を申請することが可能です。いわば代表取締役の住所について中間省略的に登記が可能という扱いです。

代表取締役の住所変更と、任期満了による重任登記については登記区分が同じであるため、登録免許税としては共通です。つまり、申請1件につき1万円(資本金1億円超の場合は3万円)です。そのため、代表取締役の住所変更の登記と重任の登記を同時申請すれば登録免許税としては変わりません。ただし、登記申請は変更から14日以内という規定がありますので、あえて代表取締役の住所変更の登記を行うことで、登記記録上、登記申請を怠っていたという情報が出現してしまいます。(万が一にも過料の可能性もありますし。)

そうしたことを避けるために、中間省略的に、重任の登記時に現住所での登記をダイレクトに行うということが行われています。とはいえ、本来は代表取締役の住所変更があれば登記を変更することは義務付けられています。代表取締役の住所は商号や本店住所ほど影響がある登記情報ではないかもしれませんが、例えば融資を受けるときには現住所で登記されていないと代表取締役と融資申し込み者の同一性が確認できないなどの不都合も生じます。また、銀行口座の開設時にも社長の身分証明書の住所と登記上の住所が違っていれば、身分確認ができず急いで住所変更登記をするということにもなr

代表取締役の住所が変わった場合には、必ず住所変更の登記申請を行いましょう。

合同会社の代表社員の住所変更

住所変更の登記が義務付けられているのは任期がない合同会社の代表社員でも同じです。むしろ代表社員は重任登記というタイミングがないため、より積極的に意識しないと住所変更の登記が漏れてしまう可能性があります。

合同会社の代表社員についても住所変更の登記は必ず行いましょう。さらに代表社員が法人の場合はその職務執行者の住所変更があった場合にも登記が必要となります。職務執行者が法人社員の代表者であれば分かりやすいですが、従業員やその他第三者が職務執行者になっている場合には、その者の住所変更にも注意を払っておきましょう。

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

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