会社の清算を行う際には、2か月間(任意清算の場合は1か月間)の債権者保護手続きの期間が必要です。
(債権者に対する公告等) 会社法 第499条 清算株式会社は、第475条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算株式会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、2箇月を下ることができない。 |
しかし、登記手続きとしては債権者保護手続きを行ったことを証する書類(官報や個別の催告書)は添付が不要です。
減資など他の手続きの場合は債権者保護手続きを行ったことを証する書類の添付が必要ですが、清算結了の場合は添付不要ということになっています。
それではなぜ清算結了のときは債権者保護手続きを行ったことを証する書面の添付が不要なのでしょうか?
そもそも清算結了の登記の際の添付書類は「決算報告の承認が合ったことを証する書面」だけです。通常は株主総会議事録+決算報告書ということになります。このときの株主総会はいつ開くのかといえば、債権者保護手続きの後です。なぜなら債権者保護手続きの結果、新たな債務が判明したり弁済を行ったりする可能性があるので、債権者保護手続きの期間が満了するまでは決算報告書の内容も固まらないからです。
そして、この株主総会での承認があったということは、その前提として債権者保護手続きも完了していることが前提であり、株主総会議事録の添付があった以上、債権者保護手続きを行った書類までは求めないということになっています。
ただし、,清算人の就任日から債権者保護手続に要する2か月の期間が経過した日以後でなければ,清算結了の登記を受理することはできないということになっています。これは債権者保護手続きが2カ月必要なことを考えると当然です。
ちなみに、決算報告書において債務超過の事実が判明する場合には登記申請は受理されません。株主総会で決算書の承認を得たときであっても,清算人は破産手続開始の申立てをする義務を負うためです。
また、債務超過部分を第三者が負担する旨が記載されていても,債務超過につき免責的債務引受けがされたうえで、その内容が反映された決算報告書が登記申請上必要となります。免責的債務引き受けがあれば、会社には受贈益が計上されますが、清算時は期限切れ欠損金も損金算入できるため、法人税額にはほぼ影響がないことが通常です。
いずれにしても、清算するときは株主総会の承認を以て債権者保護手続きを行ったことまで担保しているわけですが、債務超過については解消したうえでの登記申請が必要ということになります。
当事務所では会社の解散清算の登記手続きを随時承っております。お気軽にご相談ください。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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