本店住所の表記は基本的に自由
本店住所を決める際にはオフィスを賃貸したり、自宅を本店として設定したり、バーチャルオフィスを借りたりとさまざまな方法があります。
また、登記上の本店の住所表記については、ビル名や部屋番号を省略する場合やビル名や部屋番号までしっかりと表記するパターンなど個人の好みに応じて様々です。
このように本店の住所表記は、法務局での登記審査上はビル名や部屋番号の有無などは問題になりません。しかし、ビル名や部屋番号まで登記しているかどうかによって大きく異なってくるケースがあります。それが郵便物の受け取りです。
いまでは郵便物自体が少なくなってきており、税務署を始めとした役所関係も可能な限りのペーパーレスを進めていたり、請求書のやり取りもメールなどのデータ形式がほとんどです。しかし、それでも納付書などの一定の書類は郵送での発送となっていますし、請求書なども郵送でやり取りするケースがあります。
口座開設と本人確認のための書類の郵送
さらに、郵便物が届かないケースで、創業当初に最も困ったことになるのが金融機関からの発送物です。金融機関からの発送物は登記上の住所に郵送されますので、もしビル名や部屋番号が入っていない結果郵便物の受領ができないと口座開設もできないということになります。というのも、法律で以下のように定められているためです。
犯罪収益移転防止法施行規則
第6条
(中略)
三 法人である顧客等 次に掲げる方法のいずれか
イ 当該法人の代表者等から本人確認書類のうち次条第二号又は第四号に定めるものの提示を受ける方法
ロ 当該法人の代表者等から当該顧客等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地の申告を受け、かつ、(中略)対面しないで当該申告を受けるときは、当該方法に加え、当該顧客等の本店等に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法)
ハ 当該法人の代表者等から当該顧客等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地の申告を受けるとともに、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律第三十九条第四項の規定により公表されている当該顧客等の名称及び本店又は主たる事務所の所在地(以下「公表事項」という。)を確認する方法(当該法人の代表者等と対面しないで当該申告を受けるときは、当該方法に加え、当該顧客等の本店等に宛てて、取引関係文書を書留郵便等により、転送不要郵便物等として送付する方法)
(後略)
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このように、金融機関の口座開設をする際には、転送不要郵便で登記上の本店住所あてに郵送物を発送する方法で本人確認が行われます。そのため、本店住所の表記そのままでは郵便物が届かないといったケースでは口座開設に支障が出てきます。
特に問題になるのがバーチャルオフィスです。バーチャルオフィスには多くの会社が登録しているため、各会社の社名そのものをビルの郵便受けに貼り付けるなどの方法は採れません。結果バーチャルオフィスであることが本店住所の記録から分かるかどうかで郵便物が届くかどうかが決まります。そのため、バーチャルオフィスを本社住所として登録する際には、バーチャルオフィスであることが分かるように本社住所を登記する必要があります。番地までではなく、ビル名や階数・部屋番号まで特定して登記しないと口座開設ができないということになりかねませんので注意しましょう。
そうではないオフィスビルへの入居や自宅を本社登記するといった場合には、郵便受けなどに社名を表示しておけば郵便物は届きますので問題ありません。
とにかくバーチャルオフィスなど個々の契約者の社名が物理的に表示されないケースでは、登記する本店住所そのもので郵便物が確実に届くように表示しておくことが重要です。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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