コラム

外国に居住している親族を扶養に入れるには?

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日本で会社を設立してその会社から給与を受け取っている人や、日本で雇用されて働く人で家族が海外にいるといったケースの扶養についてまとめました。

制度としての「扶養」という言葉には2つの意味があります。一つは健康保険の「扶養」、もう一つが所得税・住民税の「扶養」です。

健康保険の扶養に海外在住の親族を入れるには?

まずは健康保険からです。

健康保険については、被扶養者とは「日本国内に住所を有するもの又は外国において留学をする学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められるものとして厚生労働省令で定めるもの」となっています。

つまり原則として健康保険の被扶養者にするには日本国内に居住していることが必要です。しかし、例外的に以下のケースであれば外国に居住している親族であっても被扶養者にすることができます。

(1)外国において留学をする学生
(2)外国に赴任する被保険者に同行する親族
(3)観光、保養またはボランティア活動その他就労以外の目的で一時的に海外に渡航する親族
(4)被保険者が外国で就労している間に親族になった人
(5)上記のほか、日本国内に生活の基礎があると認められる者

ざっくり言うと、以下のように分けられます。

被保険者 被扶養者にできる国外居住者
海外に赴任する人 海外に行く前から扶養に入っていた人や現地で婚姻などして家族となった人
日本で働く人 留学、観光など就労以外の目的で海外に期限を決めて居住する人

つまり、以下のようなケースでは海外在住の親族は被扶養者に入れられないということになります。

・海外在住の人が日本で会社を設立して、日本の健康保険制度に加入したケース

・海外に親族を残して日本にきて会社を設立したケース

もちろん被扶養者が日本に住民票を持つようになる(もしくはもともと持っている)のであれば、もし被保険者が海外在住だったとしても日本で健康保険の被扶養者になることができます。

所得税・住民税の扶養に海外在住の親族を入れるには?

次に所得税や住民税の扶養です。つまり海外在住の親族を配偶者控除や扶養控除の対象にできるかということです。

この点については、非居住者である親族について配偶者控除や扶養控除の適用を受けるためには以下の書類が必要となっています。

非居住者である親族の年齢等の区分 確定申告に必要な書類
配偶者 親族関係書類+送金関係書類
16歳以上30歳未満又は70歳以上の配偶者以外の親族 親族関係書類+送金関係書類
 

 

 

30 歳以 上70 歳未 満の配偶者以外の親族

① 留学により国内に住所

及び居所を有しなくなっ

た者

 

親族関係書類+留学ビザ等書類+送金関係書類

 

② 障害者

 

親族関係書類+送金関係書類

確定申告する人からその年において生活費又は教育費に充てるための支払を 38万円以上受けている者  

親族関係書類+38万円送金書類

(上記①~③以外の者) 対象外

親族関係書類とは、親族であることが確認できる書類です。日本でいうところの戸籍ですが、諸外国には戸籍に該当する制度がないところがほとんどであるため、婚姻証明書や出生証明書などで親族関係を証明します。

送金関係書類とは、海外に送金したことが分かる書類(口座履歴や外国送金依頼書、非金融機関系(Paypalなど)で送金したことが分かる書類)や、海外居住の親族が使用したクレジットカードの代金を確定申告者が支払っていることが分かる書類などが該当します。

38万円送金書類とは、国外居住の親族への生活費支払額が38万円以上あることを証明できる書類です。

健康保険にしても、所得税・住民税にしても、海外に在住する親族を対象にするには特別の要件や書類が必要です。特に健康保険についてはかなり限定的な状況でのみ扶養にすることが可能である点に注意しましょう。

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

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