未納の税金がある状態で清算結了した場合
会社の清算手続きが完了すると、登記上は清算結了ということで登記記録も閉鎖されることになります。清算結了の登記の手前では、債権者保護手続きも行われるので、金融機関やその他の取引先債権者の保護については確保されています。
しかし、法人税や源泉所得税などの租税関係については、債権者保護手続きでは保護されませんし、未納の税金があったとしても、清算結了の登記自体は申請することができます。
それでは、未納の税金がある状態で清算結了の登記が行われた場合は、納税義務も免除されるのかといえば、そんなうまい話があるわけはありません。
清算結了の登記によって、法的にはその会社は消滅したことになり、対債権者という意味ではもはや会社として弁済することはありません。債権者は債権者保護手続きにより保護の道が開かれているためです。
しかし、税金関係については、清算事務の流れの中で保護が図られるわけではありません。そのため、税法上は、清算の有無は実体で判断します。つまり、清算結了の登記が終わっていても、未納税額がある以上は税法上その会社は清算されていないものとして扱われます。
清算人等が納税義務を引き継ぐ
税法上、清算の有無は実体で判断するということになっていますが、法的に法人は清算結了の登記によって消滅しています。そこで、納税義務を清算人等が引き継ぐことになります。
具体的には、未納の状態で清算結了した場合に納税義務を引き継ぐのは以下の者です。
1)清算人
2)残余財産の分配や引渡しを受けた者
清算人は登記されているので登記記録を見れば分かります。もう一つの残余財産の分配等を受けた者については、清算の過程で残余財産の分配を受けた者のほかに、解散前に解散することを前提に配当などを受けた者も含まれます。本来分配は税金を支払ったあとに行うべきところ、未納税額がある状態で分配を受けた人も税金の支払いに充てられるべきお金の分配を受けたということで、納税義務を引き継ぐことになっています。
引き継いだ納税義務の金額の範囲
清算人等が納税義務を引き継ぐとして、未納の税金をすべて清算人が負わなければならないのかといえばそういうわけでもありません。もともとは清算した法人が納めるべきものでしたので、引き継ぐ税金といっても一定の範囲に限られます。
清算人については分配した財産の価額、分配を受けた者は分配を受けた財産の価額の限度で納税義務を引き継ぎます。現金であればその金額、モノを分配したのであれば分配時の時価をベースに納税義務を算定します。
清算人や分配を受けた者が引き継いだ納税義務を履行できなければ滞納処分が行われることもありますが、その場合は、分配されたものが対象になるというわけではなく、引き継いだ納税義務の範囲で個人資産全体が滞納処分の対象となります。(お金には色はありませんので、専らモノを分配したときの話にはなりますが。)
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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