役員が死亡した場合の退任登記
取締役や監査役などの役員は、以下の場合に退任します。
1)任期満了
2)辞任
3)解任
4)死亡
5)破産手続きの開始決定
6)後見開始の審判を受けたこと
このうち、役員が任期中に死亡した場合の登記手続きについて見てみます。
役員が任期中に死亡した場合には、委任契約が終了することになりますので、死亡した日に当然に役員を退任することとなります。(役員の相続人が役員の立場を引き継ぐということはありません。)
参考
会社法 民法
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役員の死亡による退任登記には、死亡を証する書面の添付が必要です。
例えば、公的な書類として、死亡の記載がある戸籍、死亡診断書、住民票の除票などがあります。そのほかに、任意に作成した書類として、相続人などの遺族から提出された死亡届でも登記を行うことができます。
死亡届 |
貴社の取締役〇田 〇男は,令和3年10月31日死亡いたしましたので,お届けいたします。
令和3年10月31日 住所 東京都千代田区○○ 株式会社ABC 御中 |
このような様式で、ご遺族から死亡届を受けることで死亡による役員退任の登記を申請できます。死亡届であれば、公的書類を受領するよりも、会社も遺族も手間がかからずに済みます。
なお、会社が任意に作成した議事録や、新聞の死亡欄などは登記申請には使えません。
1人役員の会社で唯一の役員が死亡した場合
今では1人役員の会社も珍しくなくなりましたが、1人役員の会社でその役員が死亡した場合はどうなるのでしょうか?
1人役員であれば、当然その人が代表取締役(合同会社では代表社員)となりますが、役員が1人もいなくなったからといって、その会社が消滅するわけではありません。かといって、代表取締役の相続人が自動的に代表取締役になるわけでもありません。
1人で経営していた会社だと、特に事業承継のプランがあるわけでもなく、役員なしの状態が発生してしまうことになります。
ただ一人の役員が死亡した場合、まずはその株式(合同会社であれば持分)を引き継いだ者(相続人など)が、株主総会の普通決議によって新たな役員を選任することになります。そのまま相続人が就任して事業を継続するケースもあれば、そのまま会社を解散・清算するケースもあります。いずれの場合も、株式や持分を引き継いだ相続人が何らかの対応をする必要があります。
後継者が決まらない場合でも、まずは死亡による退任の登記を申請しましょう。その結果役員は0人になりますが、仕方ありません。役員が0人であっても会社としては存在し続けます。その後、どのようにその会社を扱うかということを決めていきます。
もし、後継者が決まらず、かつ解散・清算することもできなければ、「休眠」という手段があります。休眠とは、法律で認められた手続きではなく、要は事業活動が停止した会社について、何も手続きせずに放置しておくことをいいます。金融機関などから借入金があるなど、利害関係者がいるとさすがにそうはいきませんが、他に利害関係者がいなければ、役員の死亡による退任の登記だけを申請して、あとは放置するということです。社長が亡くなったことで、既存顧客の取引も止まり、その会社として事業活動の見込みがなく、かつ債権者などの利害関係者もなく、解散や清算にかけるお金もないといったようなケースでは休眠も検討することになります。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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