合同会社の社員の身分確認は登記上行われない
株式会社の取締役は印鑑証明書の実印で就任承諾書に押印する必要があります。
取締役会設置会社であれば代表取締役のみ印鑑証明書の添付が必要で、その他の取締役については本人確認証明書(運転免許証など)の添付でも問題ありません。(本人確認書類の代わりに印鑑証明書を添付することも可能です。)印鑑証明書や本人確認書類を添付することで、株式会社と取締役との間の委任関係が成立したことを証明したり、なりすましを防いだりしています。
それでは合同会社の業務執行社員や代表社員は登記申請の際に何らかの本人確認書類の提出が必要になるのでしょうか?その答えは「No」です。合同会社の設立登記については、代表社員や業務執行社員の印鑑証明書や本人確認証明書の添付は必要ありません。合同会社では会社の印鑑を法務局に届け出る際に、印鑑を届け出る代表社員の個人の印鑑証明書が必要となります。しかしこれはあくまで印鑑届書に押印した実印との照合のためであって、代表社員に就任することについて添付しているわけではありません。
もともと代表社員への就任は合同会社との委任関係が発生するわけではないので、本来代表社員への就任に就任承諾書は不要な気もします。ただ、社員の互選によって代表社員を定めた場合には、代表社員への就任についての意思確認の意味で、就任承諾書の添付が求められています。しかし、これは委任契約が発生しているわけでもなく代表社員個人の実印を押印する必要もなく、したがって印鑑証明書の添付も不要です。
結局のところ、合同会社の登記申請においては、法務局に印鑑を届け出る代表社員以外は身分を確認するプロセスが法的にはありません。極端な話、本当の氏名とは異なる名前で登記したり、実在しない人を業務執行社員として登記したりすることだってできてしまいます。
そのため、社員の身分確認においては、合同会社を設立するメンバー同士でしっかりと行っておく必要があります。運転免許証などでどこのだれかということを確認しておかないと、「山田太郎」さんだと思っていた人が実は「山田太郎」さんではないということだってあり得ます。もちろん合同会社の社員になりすますことに何らメリットもないでしょうけど、閉鎖的な会社形態である合同会社では仲間内の信頼関係が非常に重要な要素になります。合同会社の身分確認は、会社設立メンバーが責任をもってやっておくことが重要です。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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