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合同会社での持分払い戻しのための減資

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合同会社での持分払い戻しのための減資

合同会社での持分の払い戻しとは、合同会社の社員が退社する場合に、その社員の資本金や資本剰余金、利益剰余金を払い戻すことです。似たような名称で出資の払い戻しという手続きがありますが、出資の払い戻しは退社にかかわらず社員が出資した額を払い戻してもらう手続きです。

持分の払い戻しによって、その社員にかかる資本金、資本剰余金、利益剰余金がそれぞれ減少します。

社員の退社に伴う持分の払い戻しによって資本金が減少する場合には、その登記が必要となります。

合同会社の持分払い戻しに関する債権者保護手続き

合同会社で、持分払い戻しを行う場合で資本金の減少を伴う場合には、債権者保護手続きが必要です。特に持分払い戻しについては、以下の通り、2つの債権者保護手続きが規定されています。

会社法 第627条

1.合同会社が資本金の額を減少する場合には、当該合同会社の債権者は、当該合同会社に対し、資本金の額の減少について異議を述べることができる。

会社法  第635条

1.合同会社が持分の払戻しにより社員に対して交付する金銭等の帳簿価額(以下この款において「持分払戻額」という。)が当該持分の払戻しをする日における剰余金額を超える場合には、当該合同会社の債権者は、当該合同会社に対し、持分の払戻しについて異議を述べることができる。

第627条は合同会社の資本金が減少すること自体についての債権者保護手続きで、第635条は持分の払い戻しの結果合同会社の純資産が減少することについての債権者保護手続きです。

つまり、持分の払い戻しについて資本金が減少しない場合でも、持分の払い戻しの結果、会社の剰余金全体がマイナスするのであれば債権者保護手続きが必要になるということです。ただし、この場合は資本金は変わらないので、減資の登記は不要ということになります。

持分を払い戻すのに資本金が減少しないということは違和感がありますが、例えば社員間で資本金と資本剰余金を交換すれば、退社する社員について、資本剰余金と利益剰余金の払い戻しだけで済む場合もあります。あとは、剰余金の額がマイナスするかどうかで債権者保護手続きの要否を判断します。

合同会社の持分払い戻しのための減資の登記

持分払い戻しのための減資の登記は、減資の効力発生日から2週間以内でえの登記申請が必要です。

必要書類は以下の通りです。

1)社員の退社の事実を証する書面
合同会社の社員の退社事由に応じて異なってきます。

2)債権者保護手続きが必要な場合には、債権者保護手続きを行ったことが分かる書面

3)資本金の計上に関する書面

4)資本金の減少について業務執行社員の過半数の一致があったことを証する代面

資本金の金額が減少しない場合には登記は不要です。

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

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