累積投票とは取締役選任のための特殊な議決方式
いろいろなサイトなどでアップされている株式会社の定款の見本を見ていると、どこかに「累積投票」といった言葉を見かけることがあります。例えば定款には「取締役の選任については、累積投票によらない。」といった形で定められているケースが多いです。
累積投票とは株主総会における取締役を選任する際の議決権の行使方法の一つです。累積投票とは、2人以上の取締役を同時に選任する場合に、株主が1株について選任すべき取締役の数と同数の議決権を有する形式です。その議決権を1人にだけ集中的に投票してもよいし、また数人に分散投票してもよく、その結果、投票の最多数を得た者から順次取締役に選任する方法を累積投票といいます。
例えば、100株保有、つまり100個の議決権を有する株主がいたとして、3人の取締役を選任する議決を行うのであれば、その株主は100×3人=300個の議決権を有するということです。この300個の議決権を1人に集中的に投票してもよいですし、複数人に分散して投票してもよいということになります。
累積投票の方法を用いれば、1人1議決権であれば意向が反映されにくい少数株主についても、取締役の選任については、1人に集中投票することで意向を反映させられる可能性が出てきます。
累積投票は定款の定めで排除できる
それでは、なぜ定款のモデルに「累積投票によらない。」といった言葉がでてくるのでしょうか?それは、累積投票は定款で排除しない限り、株主の権利として原則的に認められている制度だからです。大企業のように取締役が数十人規模になるような場合には累積投票も威力を発揮しますが、株主が数名の会社であれば、累積投票を用いたからといって役員選任に影響が出ることはほぼないでしょう。
しかし、累積投票は、役員構成を安定させたい会社にとってはあまり採用したくない制度であることは事実です。そのため、定款に一文を入れることで累積投票の可能性を排除しているのです。裏を返せば、定款で排除しない限りは、累積投票は株主に認められた権利ということになります。
ちなみに、細かい話ですが、累積投票によって選任された役員の解任は、株主総会の特別決議が必要となります。
モデル定款には決まって出てきますが、あまり気にしたこともない「累積投票」という言葉。一応意味は知っておいてもよいかもしれませんね。
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この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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