海外在住の役員への外貨払い
役員への給与については税金上は定期同額給与と事前確定届出給与があります。(業績連動給与もありますが、上場会社など向けであり利用できる企業が限られています。)
項目 | 事前確定届出給与 | 定期同額給与 |
---|---|---|
事前に届け出た一定のスケジュールに従って支払われる給与。 | 毎月同額で支払われる給与。 | |
特徴 | – 支払日や金額を事前に税務署に届け出る必要がある。 – 事前に届け出たスケジュール通りに支払われなければならない。 |
– 支給額が毎月同額であることが必要。
– 事前の届け出は不要。 |
このように税務上の制約がある役員への給与ですが、海外在住の方が会社を設立して、役員の給与を外貨建てで支払いたいというご要望をいただくことがあります。海外在住の場合、生活費の支払いは外貨なので、日本からの役員報酬も外貨ベースにしたいということは当然の話です。
この場合、定期同額給与や事前確定届出給与は外貨ベースでの決定でも問題ないのかという点を検証する必要があります。
この点、定期同額給与や事前確定届出給与については日本円ベースで決定しなければならないということは求められておらず、外貨建てでの決定も有効です。
外貨建てでの決定の場合、毎月計上される役員報酬を日本円ベースにすると為替の関係で変動しますが問題ありません。そもそも定期同額給与や事前確定届出給与といった制約が設けられているのは利益調整の防止といった観点です。日本円にせよ外貨建てにせよ、あらかじめ決められた基準に従って支給している以上、利益調整の意図が介入することはありませんので、毎月の円ベースでの計上額がブレたとしても、そこは税務的な観点で制約すべきところではありません。為替の変動は意図的で行えることではありません。
結果的に、外貨建てで役員報酬の決定した場合、外貨ベースで固定額であれば、毎月の費用計上額が為替の関係で変動したとしても税務上問題はないということになります。
外貨建て役員報酬の決議方法
株式会社では役員報酬の決定については株主総会で行うことが基本です。(総枠決定方式の場合を除く。)外貨建ての場合、役員報酬の決定を行うための決議も外貨建てベースで行っておく必要があります。
合同会社であれば議事録に残しておくといった義務はありませんが、社員決定書などの形で書面に残しておくのが望ましいでしょう。
この記事の執筆者
-
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
最新の投稿
- 会社法2024年11月20日合同会社で出資の払戻しをするときの金額の限度額規制
- 税務会計2024年11月18日車両を会社で固定資産で計上する際の車検証の名義
- 商業登記2024年11月15日定款などでお金を表現する際に「金」という言葉が付いている理由
- 税務会計2024年11月13日株式の譲渡所得の確定申告とふるさと納税の現限度額の関係