コラム

恒久的施設とは?どのようなものが該当する?

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恒久的施設とは?

例えば日本在住ではない人が日本国内で事業を行おうとする場合、非居住者に該当するかどうかということをまずは確認しなければいけません。

そして、非居住者に該当する場合は、日本に恒久的施設を有しているかどうかということが日本国内で確定申告の要否を決めるうえで重要になってきます。しかし、この恒久的施設という言葉、普段聞かないような言葉なので、一体何なのかということが分かりづらいです。

所得税法では、以下のように定められています。

所得税法 第2条
8の4 恒久的施設 次に掲げるものをいう。ただし、我が国が締結した所得に対する租税に関する二重課税の回避又は脱税の防止のための条約において次に掲げるものと異なる定めがある場合には、その条約の適用を受ける非居住者又は外国法人については、その条約において恒久的施設と定められたもの(国内にあるものに限る。)とする。
イ 非居住者又は外国法人の国内にある支店、工場その他事業を行う一定の場所で政令で定めるもの
ロ 非居住者又は外国法人の国内にある建設若しくは据付けの工事又はこれらの指揮監督の役務の提供を行う場所その他これに準ずるものとして政令で定めるもの
ハ 非居住者又は外国法人が国内に置く自己のために契約を締結する権限のある者その他これに準ずる者で政令で定めるもの

これだけ読んでもなんだか分かりづらいですが、一つ言えることは全体として恒久的施設は事業を行うための施設であるということです。

「恒久」とは「不変」という意味です。恒久的施設とは、別の言葉で言い換えれば、「変わらない施設」、もう少しかみ砕くと「ずっとある施設」ということになります。施設というと建物などをイメージしますが、上記の3つのうち、ハについてはまさに人や法人(契約締結代理人)そのものが恒久的施設です。

例えば外国に居住している人が日本で不動産を所有しているからといって、それが恒久的施設に該当するというわけではないということです。恒久的施設に該当するためには、それが事業を行う場所だったり、独立して契約を締結できるような権限を持つ人であることが必要です。

恒久的施設の具体例

上記の所得税にも書いてある通り、恒久的施設に該当するパターンは3つあります。

1)非居住者が日本国内に設置した支店などの事務所
2)非居住者が国内で行う長期工事(1年を超える工事)を行う現場
3)契約を締結する代理人

このうち、判断が難しいのが契約締結代理人です。契約締結代理人とは、非居住者の事業のために同内容の契約を反復継続して締結する人や法人です。国内で非居住者のために契約を締結する代理人がいれば、その非居住者は日本国内に恒久的施設を有しているということになります。ただし、その契約が同内容で反復継続する場合ではなく、相手によって契約内容が変わるような交渉を要するものであれば、契約を締結する代理人であっても恒久的施設とは扱われません。あくまで(機械的に)反復継続して同内容で締結される契約を締結する代理人のみが恒久的施設に該当するということです。

例えば、とある非居住者Aさんが何らかのソフトウェアを開発して日本国内で販売しようとするときに、日本国内で営業代行をするBさんにソフトウェアの販売を依頼した場合で、Bさんがあらかじめ決められた価格等の契約に従って国内の顧客と契約締結する場合は、BさんはAさんにとっての恒久的施設に該当します。

そして日本国内に恒久的施設を有するAさんは非居住者であっても日本での確定申告が必要になります。

ただし、租税条約の内容で上記の所得税とは別の定めがあれば、租税条約が所得税法に優先されます。そのため、恒久的施設の有無で非居住者の確定申告の要否を判断するには、その非居住者がどの国に居住しているかということ、そしてその国で租税条約を締結しているかといったことをチェックする必要があります。

さらにややこしいことに、租税条約を締結していても所得税回避を防止としたBEPS防止条約というのが締結されていると、さらに租税条約での定めがなくなり、原則通りの所得税の定めで恒久的施設を判断するケースもあります。

とにかく日本国外にお住いの個人事業主が日本で事業を行う場合は所得税の課税判断がややこしいですので、そのあたりに強い税理士に相談することをオススメします。

 

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

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