取締役と業務執行社員には違いがある?
よく株式会社の取締役にあたるのは合同会社の業務執行社員だと紹介されているのを見かけます。小規模な会社であれば、両者はおおむね同じような立場にあると考えて問題ありません。ただし、所有と経営が分離している株式会社の取締役と、出資者がそのまま経営にあたる合同会社の業務執行社員では、どの立場にも若干の違いがあります。
両者の違いといっても法的なものなので、出資者一人でそのまま経営者になるようなケースでは、取締役と業務執行社員の間には違いはないと考えて問題ありません。
取締役と業務執行社員の相違点
まず、両者と会社の関係性についてですが、取締役は株式会社との間は委任関係にあるのに対して、業務執行社員は合同会社の出資者そのものであり、業務執行社員と合同会社との間には就任にあたっての委任契約は存在しません。会社法上は「役員」といえば会社と委任関係にある者を指しますので、厳密にいえば業務執行社員は役員とは呼びません。
また、このことに付随して、取締役であれば社外取締役という立場が存在して、業務執行取締役の業務をチェックするということが成り立ちますが、合同会社では社外社員という立場は存在し得ません。社員=出資者であり経営者であるからです。業務執行社員以外の社員についても業務の状況を調査する権限を持っているため、業務執行社員以外の社員は合同会社内での監査役的な立場といえます。
上記を含めて、取締役と業務執行社員の違いをまとめてみます。
取締役 | 業務執行社員 | |
会社との関係 | 委任契約 | 契約関係はない(社員間は組合契約) |
立場 | 役員 | 社員 |
業務内容 | 業務執行取締役:経営
非業務執行取締役:取締役の業務監視 |
経営+他の業務執行社員の業務監視 |
非業務執行の立場 | 社外取締役が該当 | 該当なし(業務執行社員同士で業務監視) |
就任承諾 | 必要 | 不要 |
任期 | 原則2年(定款に定めれば1~10年の間で変更できる) | なし |
辞任 | いつでも可能 | 正当な理由がある場合のみ可能 |
多くの合同会社は小規模であり、あまり取締役と業務執行社員の違いを意識する場面は少ない(重任登記の要否くらい?)ですが、複数人の業務執行社員で合同会社を経営しようとする際には、両者の違いに気を付けておく必要があります。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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