株式の総数引受契約とは?
第三者割当で増資を行う際には、株主総会での募集決議(取締役会がある場合は、取締役会での割当決議)を行う方法のほかに、総数引受契約方式というものがあります。
この総数引受契約は、会社法で、以下のように定められています。
第205条
前二条の規定(募集株式の申し込みと割当の規定)は、募集株式を引き受けようとする者がその総数の引受けを行う契約を締結する場合には、適用しない。
2 前項に規定する場合において、募集株式が譲渡制限株式であるときは、株式会社は、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によって、同項の契約の承認を受けなければならない。ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない。
総数引受契約というのは、発行する株式の全てを契約の相手方に割り当てるという内容で行う契約です。相手方は単独でもよいですし、複数でもよいです。例えば、新たに100株発行する場合で、100株をAとBで50株ずつ引き受ける契約を、発行会社とAとBの3者間で締結するということです。総数引受契約は、株式の引き受けの申し込みと割当を一気に行うという手続きといえます。
総数引受契約のメリット
総数引受契約であれば、1日で増資が完了するということが最大のメリットです。通常の割当では、会社は払込期日の前日までに割り当てる株式の数を通知しなければならないと定められています。「前日」までに通知なので、このケースでは最低でも2日必要ということになります。(さらに公開会社では払込期日の2週間前までに通知が必要です。)
しかし、総数引受契約では、株主総会の決議、総数引受契約の締結、払込みを同日に行うことが可能なので、1日で増資を完了させることができます。なぜなら、総数引受契約では、募集株式の申し込みと割当の規定は適用しない、つまり払込期日にお前日までに割り当てる株式数を通知する必要もないからです。
と、細かい理屈はさておき、すでに割当る者が決まっていれば、総数引受契約での手続きが有利ということです。
総数引受契約での手続き
株式の総数引受契約は一人で全株引き受けるのであれば話は単純ですが、複数で共同して引き受ける場合には、そもそも総数引受契約とはないかという理屈を理解しておく必要があります。総数引受契約とは、個別の引受の結果として全部引き受けてもらったというよりは、最初から全員で共同して発行される株式の総数を引き受けるという意思が必要です。
そのため、本来であれば、一つの総数引受契約書で、全員が連名で契約するというのが筋です。しかし、例えば場所が離れた者が総数引受契約するようなケースでは、連名で契約するのは非常に手間がかかります。そこで、実務的には個別に契約書を作成して個別に取り交わし、最終的にすべての個別の契約書を合わせて総数に一致すれば問題ないということになります。登記を行う際にも、この形式で手続きできます。
また、株主総会議事録(取締役会議事録)には、総数引受契約の締結を要件とする旨の記載を入れておく必要があります。会社法上、「総数引受契約」の締結をすることで、各種の株式募集の規定を適用しないとなっているため、その旨を明確にするためです。
総数引受契約での増資をお考えの会社様はぜひ当事務所までご相談ください。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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