役員重任する際の株主総会のパターン
株式会社では、取締役の任期は最長でも10年間と定められています。もう少し厳密にいうと、「選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで」です。
定時株主総会は、通常毎年決まった時期に行いますので、結局は任期は最長10年間と考えておけばよいでしょう。
そして、10年間経過後は、取締役の任期は満了しますので退任するか、そのまま任期を更新する(重任)が必要です。重任する場合には、定時株主総会でその旨を決議し、かつ株主総会議事録にその旨を残しておく必要があります。
このときの定時株主総会では以下のようなパターンが考えられます。
1)重任される取締役(または監査役)が定時株主総会に出席しているパターン
2)重任される取締役(または監査役)が定時株主総会に出席していないパターン
取締役や監査役が出席しなくても株主総会は有効に成立するので、いずれのパターンも考えられます。
取締役の重任時に株主総会議事録に記載すべき事項
そのうえで、重任とは退任と新たな委任契約による就任がワンセットになったものと捉えますので、以下のようなフローが考えられます。
重任される取締役(または監査役)が定時株主総会に出席している | 定時株主総会の場で就任承諾 | 株主総会議事録にその旨を記載 |
定時株主総会開催後に、後日就任承諾 | 株主総会議事録とは別途就任承諾書を受領 | |
重任される取締役(または監査役)が定時株主総会に出席していない | 定時株主総会開催後に、後日就任承諾 | 株主総会議事録とは別途就任承諾書を受領 |
株主総会議事録には、出席した役員の氏名の記載が必須ですので、定時株主総会の場で就任承諾をした役員については、出席役員として株主総会議事録に氏名が載っている必要があります。
また、その場で就任承諾したということを議事録上残しておくために、「被選任者はその就任を承諾した。」旨の記載もしておく必要があります。
まとめると、重任時に株主総会議事録の記載だけで行う場合は
1)その役員が出席していること
2)その役員がその場で就任承諾していること
の2点の記載が必須ということになります。
一方で、別途就任承諾する場合には、就任承諾などの記載は不要です。しかし、別途就任承諾書を準備するのは手間ですし、新たに印鑑証明書を準備してもらうなどのプロセスも必要となるので、可能な限り就任が決まっている役員については株主総会に参加してもらって、その場で就任承諾してもらうのかよいでしょう。
なお、議決権を行使できる株主全員が書面やメールなどで同意の意思表示を示した場合に、その提案について可決する旨の株主総会の決議があったとみなすケース(みなし決議)の場合には、決議の場で就任承諾するということが物理的に不可能ですので、必ず就任承諾書を添付する形になります。
重任する役員全員の署名や押印は不要
定時株主総会で就任承諾した場合、議事録にその旨記載してあれば、就任承諾した本人の署名や押印は必要ありません。定時株主総会議事録の記載は真正であることを前提に、もし偽造していれば過料の制裁等によって担保されているためです。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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