株式発行の募集事項の決定は取締役等に委任できる
新株発行の際の募集事項の決定は、原則として株主総会の特別決議(公開会社の場合は取締役会の決議(株式の有利発行の場合は、株主総会の特別決議))で決定することになります。
募集事項とは、以下の5点をいいます。
- 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。)
- 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。)又はその算定方法
- 金銭以外の財産を出資の目的とするとき(現物出資を行うとき)は、その旨並びに当該財産の内容及び価額
- 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は財産の給付の期日又はその期間
- 増加する資本金及び資本準備金に関する事項(自己株式を処分する場合を除く)
ただし、頻繁に増資を行う株式会社などで、増資の都度募集事項を決定するのは、非常に手間がかかります。
そこで、株主総会で募集事項の決定を取締役(取締役会設置会社の場合は取締役会。以下取締役等)に委任する決議をすることができます。
募集事項の決定を行う権限を取締役等に委任する場合は、株主総会では、取締役等が募集事項の決定をすることができる募集株式の数の上限と払込金額の下限を定めておけば問題ありません。
募集事項の決定を取締役等への委任は、株主総会の決議日から1年以内に払込期日が到来する募集のみ有効となります。
株主総会議事録への記載例
株主総会議事録の記載例は以下の通りです。
第1号議案 新株の発行の件
議長は,下記要領により募集株式を発行することにつきその承認を求めたところ,満場異議なくこれを承認可決した。 記 以下の株式数と払込金額の範囲で、募集事項の決定は取締役会に委任する。なお、本委任は、2022年12月31日までに払込期日が到来する募集株式の発行決議においてのみ有効とする。 発行する募集株式数 の上限 100株 募集株式の払込金額の下限 1株につき 金1 円 |
募集する株式の種類が譲渡制限株式の場合は、募集事項の委任を行う場合には、譲渡制限株式の種類株主総会の特別決議が必要です。ただし、定款でこの特別決議が不要な旨を定めている場合を除きます。
上場会社などでない限り、全ての株式は譲渡制限株式ですので、定款で別段の定めがない限り、募集事項を取締役等に委任するには種類株主総会の特別決議が必要ということになります。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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