不動産を現物出資することは可能です。現物出資する場合は、株式会社であれば検査役の選任が必要になりますので不動産を現物出資するということはあまり用いられません。
しかし、合同会社であれば、不動産の価額に関わらず現物出資するにあたって検査役の選任は必要ありません。これは設立段階でも設立後でも同じです。そのため、例えば資産管理会社としての合同会社を設立して不動産を現物出資するといった方法は株式会社に比べて法的なハードルはかなり低いといえます。
ただ、これはあくまで会社法の観点からハードルが低いというだけです。不動産の現物出資を行うには、さらに2つのことを考慮する必要があります。それが税金の面と登記の面です。
不動産の現物出資と税金
まず税金の面から考えます。
不動産を現物出資するということは、所得税の面からは不動産を会社に売却して、対価としてお金の代わりに株式を受け取ったというように捉えます。それでは対価はいくらになるのかといえば現物出資の場合は株式の時価です。ただ、設立したばかりの会社には時価などないので、出資した金額がそのまま時価として扱われます。
例えば不動産を現物出資して会社を設立する場合、その現物出資に対応する資本金(+資本剰余金)を1,000万円とすれば、売却代金1,000万円で不動産を会社に売却したと考えます。
あとは通常の売買と同じで、その不動産の取得金額を計算して、その差額(登記費用などの付随費用があればその費用ものぞいた金額)を譲渡所得として確定申告することになります。
このように不動産を現物出資する場合、税金の面からは以下の2点についての金額の算定が非常に重要になります。
1)いくらで現物出資したことにすればよいか(売却代金の計算)
2)いくらで取得したのか(取得価額の計算)
この辺りは非常に複雑なので、税理士に相談の上進めることをオススメします。
不動産の現物出資と登記
次に登記の観点です。
登記については、通常の不動産売買と手続きとしては変わりません。売買と異なるのは、お金が動かないという点です。売買であれば、売り手の銀行口座に売却代金が振り込まれたら司法書士が登記を申請するといった流れが一般的です。しかし、現物出資の場合は、株式が代金の代わりになりますので出資者の銀行口座にお金が入金されるということはありません。それでは現物出資の登記を申請すべきタイミングはいつになるかといえば、会社設立であれば会社設立日となります。
しかし、会社設立の登記については申請後法務局での登記完了まで数日かかりますので、実際に現物出資による所有権移転の不動産登記を行うのは会社設立日から数日後の登記完了後となります。増資による現物出資であれば、登記完了を待つ必要もありませんので、増資の登記申請日に現物出資による不動産登記も申請すべきと言えます。
このように、不動産の現物出資は税務と登記が絡み合う複雑な手続きです。最も望ましいのは、司法書士と税理士の資格を両方持っている人に依頼することでしょう。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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