株主名簿の記載事項は決まっている
株主名簿とは、その名の通り、株式会社の株主が誰なのかということを一覧にしたものです。
一般的な名称に思えますが、会社法でしっかりと「株主名簿」という用語が出てきて、記載事項まで指定されています。
会社法121条(株主名簿)
株式会社は、株主名簿を作成し、これに次に掲げる事項(以下「株主名簿記載事項」という。)を記載し、又は記録しなければならない。 一 株主の氏名又は名称及び住所
二 前号の株主の有する株式の数(種類株式発行会社にあっては、株式の種類及び種類ごとの数)
三 第一号の株主が株式を取得した日
四 株式会社が株券発行会社である場合には、第二号の株式(株券が発行されているものに限る。)に係る株券の番号
|
株主名簿への記載事項として法定されているのは上記の4つです。その中で、「株券発行会社」であるケースは少ないので、実質的には3項目ということになります。(もし株券発行会社で株券が不発行であれば、その旨を株主名簿に記載しておけばよいでしょう。)
氏名又は名称 | 住所又は所在地 | 保有する株式の種類及び数 | 株式取得日 |
山田 太郎 | 東京都新宿区新宿0-0-0 | 普通 100株 | 2021年4月1日 |
株式会社ABC | 東京都千代田区千代田0-0-0 | A種 10株 | 2022年1月1日 |
会社設立をした際の発起人として株式を取得した日については、株式取得日=会社設立日となります。
ちなみに、合同会社では定款が社員名簿を兼ねるため、定款とは別に社員名簿を作成する必要はありません。
株主名簿の管理方法
上場会社のように、日々株主が入れ替わるようなケースでは、信託会社などに株主名簿の管理を委託しています。この場合の委託先を「株主名簿管理人」といいます。しかし、ほとんど株主の変動がない中小企業では、自社で株主名簿を管理しています。
株主名簿は会社が作成してデータなどで保存しておく義務があります。通常はExcelなどで作成して、保存しておくことが多いでしょう。
以前は、株主名簿は税務署への法人設立届出書の添付書類だったので、法人設立届出書を提出する際についでに作成していましたが、今は添付書類から除かれています。そのため、意識して作成する必要があります。株主=発起人のみといった会社では、株主名簿がないからといってそれほど困ることはないですが、会社法上作成が求められているため、作成しておくべきです。
登記に使う株主リストと株主名簿の関係
株主名簿と似たようなものに、登記で使用する株主リストがあります。株主リストは、登記申請で添付した株主総会議事録について、その議決権を持つ株主をリスト化したものです。
株主名簿の法定記載事項には、議決権数がないため、一般的には株主リストに使用することはできません。保有する株式数は株主名簿の記載事項ですが、種類株式などを考慮すると、必ずしも保有株式数=議決権数というわけではありません。そのため、登記の際には株主リストを新たに作成するか、既存の株主名簿に議決権数を加える必要があります。
ちなみに、株主名簿に法定記載事項以外を記載しても問題ないので、常に議決権数を株主名簿に入れておくことも可能です。
この記事の執筆者
-
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
最新の投稿
- 会社法2024年11月24日株式会社の解散登記で定款添付が必要な理由
- 会社法2024年11月20日合同会社で出資の払戻しをするときの金額の限度額規制
- 税務会計2024年11月18日車両を会社で固定資産で計上する際の車検証の名義
- 商業登記2024年11月15日定款などでお金を表現する際に「金」という言葉が付いている理由