株券を発行する定めとは?
時折、「株券を発行する旨の定め」として「当会社の株式については、株券を発行する」といったことが書いてあることがあります。
同族会社などでは、古い規定が残っていて株券を発行する定めが登記されていたとしても、通常は気にならないかもしれません。しかし、例えばM&Aで買収されるときなどには、その定めの廃止を求められることがあります。株券を発行していると、企業買収の際にその株券を回収するなど、余計な手間がかかります。
新たに設立する会社で株券を発行する旨を登記することはほぼないでしょうから、現在登記が残っている会社について、場合によって必要となる手続きです。
株券を廃止するには?
そこで、株券を発行する旨の定めを廃止する登記をする必要があります。
株券を発行する旨の定めは定款に記載されていますので、まずは定款変更のために株主総会の特別決議が必要です。
さらに、公告と株主への個別の通知も必要となります。公告については、
1)株券廃止の定款変更をする旨
2)株券廃止の効力発生日
3)効力発生日をもって株券が無効になる旨
を公告します。
株主総会の決議については、通常の臨時株主総会(または定時株主総会)で決議すればよいですが、公告するのはお金も手間もかかります。
そこで、実際には株券を発行していない会社については公告はしなくてもよいということになっています。株券発行の旨が登記されていたとしても、実際には株券を発行していないという会社は多々あります。あくまで、株券を発行する旨は、「株券を発行できる」という意味で、株券を発行しなければならないというわけではありません。株券を実際には発行していないのであれば、公告しても意味がありません。
それでは、実際には株券を発行していないことはどのように証明すればよいのでしょうか?その点については、「株券を発行していないことを証する書面」ということで、株主名簿に「株券は発行していない」旨を付記しておけば十分です。登記の際にも、そうした書面を添付しておくことで、公告に代えることができます。
株主への個別の通知は省略できませんが、株主総会前に通知してしまっても手続き上問題ありません。
廃止する株券そのものの回収は必要ない
もし、株券を実際に発行していた場合、廃止に伴ってその株券は回収する必要はあるのでしょうか?答えはNoです。効力発生日をもって株券は無効になってただの紙になります。
株券廃止後は、会社が管理する株主名簿によって株主をデータ管理していくことになります。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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