コラム

役員社宅で節税。そのルールとは?

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会社設立後に節税ということでよく話題に上がるのが社宅です。社宅には、大きく分けて2つのパターンがあります。

パターン 内容 経費となる部分
自社保有社宅 自社名義の不動産を保有して、そこに役員や従業員を居住させる 減価償却費や固定資産税などの維持費
借り上げ社宅 自社が借主となってマンションなどを借りて、そこに役員や従業員を居住させる 家賃のうち、役員や従業員の負担分を除いた額

通常、中小企業で「社宅」というと借り上げ社宅を意味します。中には自社保有物件を持つケースもありますが、件数としてはそれほど多くありません。実際に自社保有の社宅は大企業中心のシステムと言えます。

この借り上げ社宅ですが、節税に有効と言われていますが、なぜ有効なのでしょうか。それは家賃を会社の経費で計上できるからです。個人名義の契約でも事務所部分を経費計上することはできますが、プライベート部分を経費計上することはできません。しかし、借り上げ社宅つまり借主が会社であれば、プライベート部分についても一定割合で経費計上することができます。

仕事として使っている部分 プライベート部分
会社名義の契約(借り上げ社宅) 経費にできる 経費にできない
個人名義の契約 経費にできる 一定額を経費にできる

このプライベート部分の扱いの差が節税につながるというわけです。

ただし、プライベート部分も全額経費で計上することは借り上げ社宅でもできません。本来は個人負担すべきところを会社が代わりに負担してあげているわけなので、その分の利益(賃料相当額)を役員や従業員から徴収する必要があります。

この「賃料相当額」ですが、役員と従業員で計算が異なります。

まずは役員のための社宅の家賃相当額についてです。中小企業の「節税」というと、社長の家が賃貸なら会社名義で借りるというのが鉄則のようになっていますので、まずはこの役員についての「賃料相当額」をしっかりと理解しておく必要があります。

役員社宅の3タイプ

役員社宅については、以下の3つのタイプに分かれています。

タイプ 基準 借り上げ社宅の場合の賃料相当額
小規模住宅 法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132㎡以下である住宅
法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99㎡以下である住宅
以下の1~3の合計額

1.(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
2.12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3)
3.(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

小規模社宅以外の社宅 法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132㎡超である住宅
法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99㎡超である住宅
家賃の50%と、上記の1~3の合計額のいずれか大きい額
豪華社宅 床面積が240㎡を超える住宅や、240㎡以下であってもプールなどの施設を備えた住宅などで総合的に判断して、通常の生活の用を超えるような豪華な設備を備えた住宅 一般的な家賃相場で計算した額

借り上げ社宅といえば、多くの場合は、小規模住宅に該当します。この場合、賃料相当額を計算するためには、固定資産税の課税標準額を確認しなければいけません。この固定資産税の課税標準額は、不動産の持ち主であれば固定資産税の課税明細で確認することができますが、借り上げ社宅の借主にとっては未知の数字です。こうした場合は、確認する方法は2通りあります。

1)不動産会社を通して、もしくは大家さんに直接確認する方法

2)社宅が所在する市区町村に固定資産の評価証明書など課税標準額を確認できる書類を請求する方法

評価証明書を取得するには、基本的に所有者、つまり大家さんからの委任状が必要です。ただ、東京都などは賃借人も賃貸借契約書を提示することで取得することができるなど自治体の取り扱いがあります。詳しくは自治体に確認する必要があります。

何とか固定資産税の課税標準額を確認できれば次は数式に当てはめるだけなので、簡単に賃料相当額を計算できます。あとは計算した賃料相当額を役員報酬の手取りから天引きするだけです。

どうしても固定資産税の課税標準額が確認できない場合は、おおよそではありますが、賃料相当額は家賃の3割以下になるケースが多いので、家賃の3割を賃料相当額にしておけば安心です。(ただし顧問税理士に相談しましょう。)

当事務所では、会社設立からその後の税務まで幅広く行っています。お気軽にご相談ください!

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

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