会社設立をする際にかかるコストの大部分を占めるのが登録免許税です。登録免許税は株式会社で最低15万円、合同会社で最低6万円(いずれも登記する資本金の額×0.7%が上回ればその金額)がかかります。
しかし、この登録免許税を半額にする手段があります。それが自治体が実施する「特定創業支援事業」を受講することです。
特定創業支援事業とは、自治体単位で、各自治体内で創業をめざす起業家への支援に一層取組み、創業の促進による産業活性化を図るため、平成26年1月20日に施行された産業競争力強化法に基づいて各自治体が実施する創業支援制度です。
特定創業支援事業の対象となる人
- 事業を営んでいない個人
- 事業を開始した日以後5年を経過していない個人または法人(証明書類として個人は開業届、法人は履歴事項全部証明書が必要)
特定創業支援事業は、本店として登記する市区町村のものを受けなければいけません。例えば、渋谷区の特定創業支援事業を受けた場合に新宿区を本店所在地とする会社を設立する場合は以下の登録免許税の軽減措置は適用されません。特に遠方のバーチャルオフィスなどを本店にしようと思っている場合は、バーチャルオフィスが所在する市区町村での受講が必要です。オンラインでの受講が可能かどうかなど含めてあらかじめ確認しておく必要があります。
特定創業支援事業を受講することで受けられる軽減措置
登録免許税の軽減
軽減前 | 軽減後 | 最低軽減額 | |
株式会社設立 | 資本金の7/1000
(15万未満のときは15万円) |
資本金の3.5/1000
(7万5千円未満なら7万5千円) |
75,000円 |
合同会社設立 | 資本金の7/1000
(6万未満のときは6万円) |
資本金の3.5/1000
(3万未満のときは3万円) |
30,000円 |
特定創業支援事業の内容
特定創業支援事業の内容は各自治体によって異なりますが、ほとんどの自治体では予約制をとっています。
自治体によっては複数の特定創業支援事業を行っていますが、商工会議所が無料で実施しているため、多くの人は商工会議所が実施している特定創業支援事業を受けています。
自治体にもよりますが、特定創業支援事業の受講は1か月程度かかる場合もあるため以下のような場合には活用できないことに注意が必要です。
1)会社設立日にこだわりがある
2)取引や許認可を受けるなどの事情ですぐに会社設立する必要がある
指定された日に会場で受講するほか、コロナを経て自治体によってはオンラインでの受講も可能になったため、以前に比べて活用しやすい制度になったといえます。
また、受講は発起人かつ会社の代表取締役・代表社員となる個人が証明を受ける必要があります。
会社設立登記の際の必要書類
登録免許税の軽減措置を受けるためには、受講完了後に自治体が発行する「認定特定創業支援事業を受けたことの証明書」を法務局に提出することが必要です。自治体に申請書を提出して発行してもらう書類になります。証明書は申請書と一体化している書類です。
自治体によりますが、発行には数日から10日程度かかることがあります。
申請書には、社名や本店所在地などを記載する必要があります。もしそれらの記載が漏れていると、法務局での登記申請の際に再提出を求められますので、申請書の記入漏れには注意しておく必要があります。
会社設立までに受講が完了していればよいので、証明書の発行日付自体は設立登記の後でも問題ありませんが、提出が遅れればその分会社設立の登記完了も遅くなってしまいますので、受講が完了したら速やかに証明書の発行を自治体に申請しておきましょう。
この記事の執筆者
-
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
最新の投稿
- 会社法2024年11月20日合同会社で出資の払戻しをするときの金額の限度額規制
- 税務会計2024年11月18日車両を会社で固定資産で計上する際の車検証の名義
- 商業登記2024年11月15日定款などでお金を表現する際に「金」という言葉が付いている理由
- 税務会計2024年11月13日株式の譲渡所得の確定申告とふるさと納税の現限度額の関係