海外在住の代表者だけでは法人口座の開設ができない
当事務所でも数多くサポートをしている海外在住の代表者の会社設立。設立手続きが無事終わった後にも、頭を悩ませることがあります。それが会社名義の口座開設手続きです。
日本国内の金融機関では、代表取締役(合同会社であれば代表社員)の住所が日本にない場合、その会社の口座開設をしないという方針です。これは、国籍が日本であったとしても同じです。金融機関としては、どれだけ懇意にしている税理士からの紹介であってもいかんともしがたいところです。
海外在住なので、窓口での身分確認が困難なのと、例え一時的に日本に帰国して代表取締役本人が窓口に行ったとしても、開設後に何かあったときの連絡が困難です。
金融機関によっては、
1)日本で納税すること
2)日本における身元保証人がいること
などを条件に審査を行ってくれる金融機関もあるようですが、基本的には海外在住の代表取締役だけでは会社名義の口座開設はできないと思っておいたほうがよいでしょう。会社設立の登記はもちろんできますし、税務署への届出書ももちろん受け付けてもらえます。しかし、制度上認められているからといって、ビジネス面までスムーズに進むかは別の話です。会社を作ったら真っ先に行うであろう会社名義の口座開設の時点で引っかかってしまうのです。
会社名義の口座がないと、お客様が振り込む際に不安を感じてしまうこともありますし、税務上も会社の取引に個人名義の口座を使用することは望ましくありません。
海外在住の代表者の会社で口座開設するには?
対応としては、いずれ日本に帰国する予定があるなら、その時点で会社名義の口座開設を行うことにして、それまでは個人名義の口座で代用するという方法もありますが、ずっと国外にいるようなケースでは、共同で代表取締役を引き受けてくれる日本在住の人に就任してもらって、その人に口座開設手続きをしてもらうといった方法が考えられます。
この場合、会社設立時点で、海外在住の代表者と、国内在住の代表者(主に親族などに依頼することになるでしょう。)の共同代表で登記できれば口座開設までスムーズに進みます。もちろん、国内在住の代表者自身の属性で口座開設ができないといったことはありますが、少なくとも海外在住だからNGという点はクリアできます。
とはいえ、会社口座を開設するためだけの名義貸しのようなケースは登記上も金融機関に対しても法的な問題が出てきます。どれだけ経営にタッチするかは別として、少なくともそのまま代表者として登記に残しても問題ない人を国内代表者として就任してもらうようにしましょう。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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