コラム

合同会社を解散させるときの手続き

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合同会社も株式会社と同じく解散することができます。合同会社の解散事由として、会社法では以下のように規定されています。

会社法 第641条

持分会社は、次に掲げる事由によって解散する。

一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 総社員の同意
四 社員が欠けたこと。
五 合併(合併により当該持分会社が消滅する場合に限る。)
六 破産手続開始の決定
七 第824条第1項又は第833条第2項の規定による解散を命ずる裁判

株式会社との違いとしては、「社員が欠けたこと」が解散理由になっている点です。株式会社では自己株式の所有が認められていますが、株式というモノではなく社員というヒトそのものが集まって構成される合同会社では、会社が社員から持分を買い取る、いわば自己持分というものも認められません。そのため、社員がいなくなること即ち会社が存続できないということになります。例えば唯一の社員が死亡すれば、死亡は社員の退社事由であるため、基本的にその合同会社は解散することになります。

また、もう一つ、株式会社では運用されているみなし解散の制度が合同会社にはありません。みなし解散は12年間登記が動いていない株式会社について法務局の職権で解散の登記を行う制度です。これは役員の任期が最長10年のため、少なくとも10年に1回は重任や退任の登記が行われてしかるべきであるために可能な制度です。一方、役員の任期が定められていない合同会社では何も変化がなければずっと登記が行われないということもあり得ます。そのため12年間登記が動かないことをトリガーにするみなし解散の制度は合同会社には適用できないということです。

解散後の手続き

合同会社を解散すると、清算人の選任が必要です。合同会社の清算人の選任についてはこちらのページをご覧ください

合同会社では清算手続きは株式会社の清算手続きとほぼ同じです。

会社法 第660条
  1. 清算持分会社(合同会社に限る。以下この項及び次条において同じ。)は、第644条各号に掲げる場合に該当することとなった後、遅滞なく、当該清算持分会社の債権者に対し、一定の期間内にその債権を申し出るべき旨を官報に公告し、かつ、知れている債権者には、各別にこれを催告しなければならない。ただし、当該期間は、2箇月を下ることができない。

つまり、合同会社の清算手続きでは債権者保護手続きが必要となります。合同会社の社員は有限責任のため債権者の保護をを行う必要があります。この点は、合名会社や合資会社で認められている任意清算の手続きとは異なる点です。

ただし、この債権者保護手続きを行ったことを証する書面(官報公告の該当ページなど)は清算登記の添付書類ではありません。ただし、合同会社の清算登記については、清算人の就任日から最低でも2か月間の間は空く必要がありますので、その間にもし清算登記を申請しても、その登記は受理されず却下となります。このことは登記上債権者保護手続きの実施を証明する書類が不要であると言っているだけで、債権者保護手続きを経ずに合同会社の清算登記を申請してよいということはありません。

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

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