コラム

役員個人が保有している不動産の法人への無償・低額貸与と税金

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個人から法人への無償・低額での貸与に所得税や法人税の問題は生じない

役員個人が所有している不動産を会社のために使っている場合、何かしらの賃料を取らないといけないのでしょうか?

もし不動産の所有者が第三者であれば、しっかりと賃貸借契約を締結して毎月賃料を支払います。その所有者が役員だった場合、無償や低額での賃貸をすることで何かしらの税金が発生しそうな気がします。

ただ、結論から言えば、社長や役員、従業員などの自宅その他の不動産を会社が無償で貸与を受けても税金上の問題は発生しません。

一人社長が自宅を登記上の本店にして、自宅をメインで仕事をしていることもありますが、その場合に会社から社長個人に家賃を払っているかといえば払っていないケースがほとんどです。(支払うと社長個人の不動産所得になります。)

このことは不動産に限らず自家用車を仕事で使っていることも無償貸与ですが、いちいち会社にタダで貸したら税金の問題が発生するなんてことは考えてられません。

考えてみれば無償貸与は往々にして行われていますし、なぜ個人から法人への無償または低額の貸与に税金がかかりそうといった疑問が出てくるのかといえば、おそらく個人から法人への低額譲渡の規定と混同しているからかもしれません。

法人に対する贈与や、法人に対する時価の50%未満での対価による譲渡については低額譲渡ということで時価での譲渡があったものとみなす規定があります。この低額譲渡はあくまで「譲渡」であり、「貸与」は関係ありません。この規定にも個人と法人が登場するので混同してしまうのかもしれません。

無償か有償かで相続税の評価には大きな違いがでる

無償貸与をしたからといって法人税や所得税に何かしらのみなし収益のようなものを計上する必要はありませんが、相続税や贈与税の扱いは大きく変わってきます。

有償 無償
契約形態 賃貸借契約 使用貸借契約
評価方法 賃貸地評価 自用地評価
小規模宅地等の特例 使用できる 使用できない

このように、有償のほうが無償に比べて相続税の評価は低くできる可能性があります。ただし、有償といっても賃料が低額で固定資産税などの管理コストを賄う程度であれば実態は無償と扱われます。いくらほどを賃料として設定すればよいのかということは税理士と相談しながら決めるとよいでしょう。

自宅であれば多少使用していたからといって賃料を取る必要はないかもしれませんが、完全に事業用の不動産を個人から法人に貸与する場合は、賃料を適正に取ったほうが相続時に得であるケースもあります。

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

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