コラム

合同会社の減資で債権者保護手続きが不要なケースとは?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

一般的に、減資といえば債権者保護手続き、つまり以下の手続きが必要となります。

1)官報公告
2)知れている債権者への各別催告(定款の定めにより日刊新聞や電子公告を行った場合には各別の催告は不要)

合同会社であっても、こうした債権者保護手続きが必要であるのは株式会社と同様です。ただし合同会社の場合、株式会社と違って、減資に伴い計算書類に関する公告(つまり決算書公告)は必要ありません。

また、合同会社では減資に伴って例外的に債権者保護手続き自体が不要になるケースもあります。

(債権者の異議)
会社法 第635条 合同会社が持分の払戻しにより社員に対して交付する金銭等の帳簿価額が当該持分の払戻しをする日における剰余金額を超える場合には、当該合同会社の債権者は、当該合同会社に対し、持分の払戻しについて異議を述べることができる。

上記では「持分の払戻しで社員に交付する金銭等の帳簿価額>剰余金額」の場合に債権者保護手続きが必要であると記載されています。つまり、剰余金の金額の範囲内で減資する分には債権者保護手続きは不要ということになります。

剰余金とは基本的に「資産-負債-資本金」をいいます。合同会社の決算書上は資本剰余金や利益剰余金を指します。

合同会社で持分の払戻しにあたって減少する資本金の額は業務執行社員の過半数で決定します。このときに持分の払戻しによって減少する金額を剰余金の範囲内に収めれば債権者保護手続きは不要となり、即減資が可能ということになります。この場合、会計上は資本金の金額は変動せずに資本剰余金や利益剰余金の金額が減少することになります。

ここからは非常にテクニカルな話になりますが、持分の払戻しに伴って、社員の出資金の一部でも資本金に計上されていると金額的には剰余金の範囲に収まる払戻しだったとしても、実質的には払い戻す金額の一部は資本金であり、結果的に会計上資本金を減らす必要がでてきます。

こうしたことを回避するためには、残る社員に割り当てられた剰余金と退社する社員の資本金を交換する方法があります。つまり、退社する社員の持分には一切資本金が含まれておらず、全額剰余金で構成されているという扱いにするということです。こうした考え方をイメージするには、そもそも合同会社は各社員の持分を積み上げて資本金や剰余金が構成されているという考え方を理解しておく必要があります。

このようにいろいろと複雑な合同会社の減資手続きですが、当事務所ではクライアント様の状況に応じてスムーズに減資手続きが進められるようにサポートしております。合同会社の減資をお考えの会社様はお気軽にご相談ください。

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

関連記事

新着コラム

  1. 海外在住の方の会社設立後の税務顧問や、グローバルに展開する企業様のサポートをするうえで欠かせないのが...
  2. いつも使用している金融機関の口座について、金融機関側から口座の入出金をストップ(凍結)する旨の連絡が...
  3. 役員の給与には、主に月給に該当する定期同額給与と、賞与に該当する事前確定届出給与という2つが存在しま...
  4. 一般社団法人には、いわゆる営利型と非営利型という形があります。
  5. 租税条約は、国際的な所得や財産に関する二重課税を防止したり、租税回避を防ぐために締結される国家間の協...
ダウンロードはこちら