最近「マイクロ法人」という言葉をよく聞くようになりました。「マイクロ(micro)」とはビジネスの世界では小規模なことを表す言葉です。似たような言葉に「ミクロ(microscopic)」という言葉もありますが、どちらかというと科学的・学問的な響きがあるのかミクロ法人とは言わないですね。
このマイクロ法人という言葉については、会社法などの法律で定義されているわけではありませんが、一般的には社長一人で設立する小規模な会社、その中でもあえて個人事業主が、法人と個人で所得を分散して税金や社会保険料の負担減を図るために設立する法人を指すことが多いです。
単に一人社長の小規模な法人というよりは、上記のように個人事業主が敢えて設立した法人という感じです。このマイクロ法人は実際に個人事業主名義で行っていた実業を法人名義で受託することで売上を立てる場合もあれば、個人事業主の経理などのバックオフィス業務を受託するという建前で個人事業主から外注費を受け取るなどテクニカルに走った感じの法人もあります。
いつから流行りだしたのかは分かりませんが、最近ではこうしたマイクロ法人の設立について個人事業主の方からご相談をいただくことも増えました。
マイクロ法人のメリット・デメリット
以下は、一般的に言われているマイクロ法人のメリット・デメリットです。ただし一般論であり、特に所得分散効果については実際には個別の数値的な検証も必要です。個人事業主のままが良いという方や、法人一本に絞ったほうがよいというケースもあり、マイクロ法人の設立については個別の検討が必要となります。
2. マイクロ法人化のメリット
(1)所得の分散効果
法人化することにより、個人事業主では所得税のみの課税を、法人税と所得税に所得分散することによって税負担が軽減されるケースが多いです。また、給与所得控除や役員報酬としての経費計上など個人事業主単独では関係ない取り扱いを受けることができる。
(2) 適用される社会保険の変化
法人化することで、役員報酬の設定次第で社会保険料の負担を抑えることができる。また、厚生年金保険への加入もできるので、将来の年金の増加にもつながる。
(3) 事業継続性と信用力の向上
法人格を持つことにより、個人事業主に比べ、法人の方が信用を得やすく、ビジネスの幅を広げることが期待できる。場合によっては法人としか取引しない相手方に対してはマイクロ法人で受注することも可能になる。
3. マイクロ法人化のデメリット
(1) 管理コストの増加
法人化に伴い、決算書類の作成や税務申告、社会保険の加入手続きなど、事務手続きや管理コストが発生します。
また、個人事業主のみであれば確定申告を自身で出来ていた人でも、法人については税理士のサポートが必要になる場合もあり、ランニングコストが増加することがあります。
(2) 解散清算する場合の手間
法人を廃業する際には、清算手続きや法人登記の抹消など、個人事業主と比べて複雑な手続きが必要となります。特に債務の状況によっては清算までの過程が時間と労力を要する可能性があります。
当事務所ではマイクロ法人の設立手続きだけではなく、そもそも必要なのかの検証などを通してマイクロ法人の設立をご検討されている方のサポートをしています。お気軽にご相談ください!
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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