取締役や監査役は株主総会への出席義務はない
株主総会は、株主がさまざまな決議を行う場(リアルorバーチャル)であり、株主の出席なくては成り立ちません。それでは、取締役や監査役については出席義務があるのでしょうか?
会社法では、取締役や監査役の株主総会への出席義務について明文化された条文はありません。それでは、取締役や監査役が出席しなくてもよいのかといえばそういうわけではありません。
第314条 取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。(中略) |
上記のように、取締役や監査役は株主総会の場での説明義務があります。そのため、取締役や監査役については間接的に株主総会への出席が求められているといえます。
しかし、この条文で課せられているのは、「説明義務」であって「出席義務」ではありません。そのため、株主総会の場にいなくても、オンライン会議のシステムや電話などで株主からの質問に答えるようにしておけばこの条文についての義務は果たしたことになります。
また、例えば株主から質問が出ないような状況(株主が社長一族だけのファミリー企業や株主兼取締役の一人会社など)では、「特定の事項についての説明」が求められることはないでしょうから、あえて他の取締役や監査役を出席させるということは必要ないでしょう。
逆に株主が1名だけの会社で、他の取締役も株主総会に参加しなければならないとなると、不都合が生じる場合もあるかもしれません。(例えば株主兼代表取締役の役員報酬を独断で決める場合など)
結論的には、取締役や監査役については、株主からの質問がありえる状況の株主総会には出席義務があるけど、そうした状況にない株主総会においては出席義務がないということになります。
なお、出席すべき株主総会で欠席したからといって会社法上のペナルティがあるわけではありませんが、株主からの質問に回答できなければ役員の善管注意義務違反になりえます。そのため、その場に出席できない役員も株主総会のときは連絡が取れる状態にしておくなどは必要です。
株主総会議事録への出席役員の記載
株主総会に出席した役員については株主総会議事録への記載が必要です。オンライン会議システムで参加した場合は出席扱いになりますが、電話で連絡を取れる状態にあるだけでは欠席扱いとなります。
欠席した役員をあえて株主総会議事録に明記する必要はありませんが、どの役員が出席したかを明確にするために、出席役員だけではなく欠席役員も株主総会議事録に記載することは問題ありません。欠席の場合は、欠席理由も明記しておくと役員がどこまで職責を果たしているかも分かるため望ましいといえます。
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この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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