合同会社の損益分配は定款に方法を定められる
合同会社では、決算の都度各社員に持分の分配が行われます。実際に持分の払戻しや利益の配当が行われるまでは会社内に留保されている状態になりますが、それでも分配された持分は各社員のものということになります。
株式会社では、配当の決議を行うまでは各株主に利益が分配されることはありません。株主資本といっても、株主ごとに持分が決まっているわけではなく、株主全体の共有のようなイメージです。一方で、合同会社では、持分の払戻し前であっても、会社の利益は各社員に分配されて、それを会社が預かっているようなイメージになります。
この毎期分配される合同会社の損益ですが、会社法では以下のように分配の方法が定められています。
会社法(社員の損益分配の割合)
第622条 損益分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定める。 |
定款に定めがなければ各社員の出資額に応じて損益分配するということになります。裏を返せば、定款に定めることで、損益分配について出資の価額の比率以外で決めることも可能です。
例えば、損益分配については出資額による多数決によるということも定款に定めれば可能ということになります。合同会社には、株式会社のような配当優先株式の定めがなく、また社員の個々のスキルや会社への貢献度に応じて損益分配したいというニーズに応えるために定款で損益分配の方法を定めることができるようになっています。
ただし、定款に定めないと利益の分配は出資額の比率になりますので、特に合同会社の創業社長は注意したほうがよいでしょう。
定款への定め方としては、以下のような方法が考えられます。
(損益分配の割合)
第〇条 各社員への損益分配の割合は、事業年度終了時における出資額の3分の2の決議により決定する。
(損益分配の割合) 第〇条 各社員への損益分配の割合は、事業年度終了時における利益のうち、各社員により獲得した額をもとに、代表社員が決定する。 |
定款の定め方にルールはありませんが、少なくとも決め方について第三者にとっても分かるように明確に定めておく必要があります。
残余財産の分配も同様に定款で定められる
また、毎期の損益分配以外も、会社を清算する際の残余財産の分配についても同じように定められています。
会社法(残余財産の分配の割合)
第666条 残余財産の分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定める。 |
もし合同会社を清算することになれば残余財産の分配が発生します。そこで、定款に何も定めがなければ、出資の割合に応じて分配が行われます。しかし、定款に方法を定めておけば、定め方次第では創業社長にほとんどの残余財産を移すことも可能です。
新たに合同会社に加入する社員から見れば、加入時に利益や残余財産の分配方法が定款上どのように定められているかということはしっかりとチェックしておく必要があるということです。
この記事の執筆者
-
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
最新の投稿
- 会社法2024年10月29日疑似外国会社とは
- 会社法2024年10月27日合同会社の社員の入退社に伴う定款の書き換え、変更は必要?
- 会社法2024年10月25日持分の払戻しが発生する場合の合同会社の社員の退社の効力発生日
- 会社法2024年10月23日会社設立の際の1株当たりの単価はいくらにすべき?