コラム

誤記証明とは?間違った定款を修正する最後の手段

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

誤記証明とは?

株式会社や一般社団法人の設立には、公証人による定款の認証が必要です。しかし、いったん公証人に認証してもらった定款について、記載に誤りを発見することがあります。その誤りが単なる誤字脱字のように明確な場合や、法的に記載してはいけない内容が記載された状態で定款認証を受けたような場合に、その内容を修正できるのが、「誤記証明」です。

誤記証明とは、いったん認証した定款について、公証人が誤りがある場所を明確にしたうえで、発行してくれる証明書です。認証を受けた定款そのものを修正するわけではなく、定款とは別に「定款第〇条の「~~」という記載は、「~~」の誤りである」というような形で証明書を発行してもらい、それを法務局に提出することで定款の誤りを修正するということになります。

誤記証明の発行は無料です。もともと誤りがない状態で定款認証すべきだったところ、公証人が誤記を含んだ状態で定款認証してしまったものの訂正であるため、誤記証明についても無料での発行となります。

誤記証明を発行してもらいたい場合は、まず定款認証した公証役場に連絡して、誤記証明が発行可能なケースかどうかを確認します。発行可能ということであれば、公証役場が指定した時間に公証役場窓口に取りに行くことになります。誤記証明は公証人が発行する書類なので、発起人の印鑑証明書や実印などは必要ありません。

誤記証明で対応できるケース 単なる誤字脱字の場合

例えば、「当社の株式を譲渡するには株主総会の決議を要する」となっているところを「当社の株式を譲渡するには株主会の決議を要する」となっているようなケースです。この場合は、誤記が明確なので誤記証明を発行してもらえます。

誤記証明で対応できるケース 法的に誤りがある場合

例えば、監査役の権限を会計に限定している会社で、監査役の責任一部免除の規定を定めているようなケースです。監査役の権限を会計に限定している場合、監査役は責任一部免除の規定の対象外となりますので、この2つの規定は両立できません。そのため、いずれかを削除するために誤記証明を発行してくれます。このように法的に誤りがあるケースは判断が難しいところもありますが、法律のプロである公証人にとっては定款の認証をする前に指摘すべき点ということです。

誤記証明で対応できないケース

誤記証明は、定款認証の際に誤記を見落としたまま認証をしてしまったということで発行を受ける書類です。つまり、定款認証後に事後的に変更があった場合まで誤記証明で対応できるわけではありません。例えば、社名が「株式会社ABC」であるところ、「株式会社DEF」に変更したから、その部分について誤記証明を発行してもらおうとしても、それはできません。認証した定款そのものに誤りがあったわけではないためです。この場合は新たに定款を作成して認証してもらうか、変更があったことを証明する発起人決定書(発起人全員の実印が押されたもの)を認証してもらうことで対応することになります。

誤記証明とは、いわば公証人が認証した定款に不備があったことを自ら認める書類です。発起人の都合での変更まで誤記証明で対応できるわけではないということはしっかりと認識しておきましょう。

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

関連記事

新着コラム

  1. 2024年10月1日から始まる代表取締役等の登記上の住所非公開の制度が始まります。
  2. 合同会社の現物出資と定款への記載資産管理会社など外部の出資を予定していないプライベート会社に...
  3. 日本にオフィスがなくても非居住者が個人事業主登録できるケースとは?非居住者には国内源泉所得と...
  4. 不動産管理会社の設立にあたって社長個人が所有する不動産を会社に名義変更することがあります。
  5. 海外在住のクライアント様の増加や、取引先の国際化のなかで、会社設立の際に会社名の英語表記についてこだ...
ダウンロードはこちら