役員や従業員への貸付金の金利
会社から役員や従業員にお金を貸すことはしばしば行われます。大企業であれば、そのような制度が福利厚生などの一環として行われることもありますし、中小企業では随時行われています。(特に会社から役員)
この時に会社はお金を借りた役員や従業員から利息を取るべきでしょうか?その答えは「ケースバイケース」です。
もし、役員や従業員が金融機関やキャッシングでお金を借りれば必ず金利が発生します。また、役員や従業員の仕事の対価は給与や役員報酬の形で支払われているわけで、もし会社からの貸付をした際に金利を「おまけ」してあげれば、それも給与の一部です。会社の貴重な預金をわざわざ貸すわけなので、それは会社のために働いているからであって、利息を「おまけ」した分は給与などで課税をすべきです。
「ケースバイケース」と書いたのは、利息を取ることは必須ではありませんが、もし利息を取らなければそのおまけ分は給与課税が必要ということだからです。
ただ、「おまけ」といっても何らかの基準がなければおまけした額を計算することはできません。そのため、会社が役員や従業員にお金を貸したときには、以下の金額の利息を取るべきで、それに満たない額は給与課税するというルールになっています。
貸付を行った日 | 最低金利 |
2022年中に貸付けを行ったもの | 0.90% |
2021年中に貸付けを行ったもの | 1.00% |
2018年から2020中に貸付けを行ったもの | 1.60% |
2017年中に貸付けを行ったもの | 1.70% |
2015年から2016年に貸付けを行ったもの | 1.80% |
2014年に貸付けを行ったもの | 1.90% |
ただし、金融機関から借り入れを行って、その資金で役員や従業員の貸付を行った場合には、その借入金の利率となります。とはいえ、役員や従業員に貸付するためという資金使途で金融機関から借り入れを行うことは事実上不可能なので、通常であれば上記の表に基づいた金利が適用されることになります。(そもそも事業資金であれば上記の金利以上の金利になるでしょうから、結果的に融資を受けたお金を役員貸付などに回してしまったとしても上記の表の金利を適用したほうが、役員や従業員個人にとってはお得です。お金に色はありませんし。)
金利を適用するのは、貸付日時点で判断して、毎年見直す必要はありません。例えば2021年に貸付をすれば、返済までずっと1%であり、2022年になると0.9%に減らしてよいというわけではないです。金融機関から事業資金を借りた場合も固定金利なのと同じです。
ちなみに、会社における借入金の平均調達金利など合理的と認められる貸付利率を定め、この利率によって役員や従業員に貸し付けを行う場合は、その金利を使用してもよいということになっています。非常に優良な企業で、金融機関の借入利率が非常に低い場合には、その金利を適用してあげてもよいですよ、ということです。会社としても役員や従業員から利息を取って儲けようということはないでしょうから、このような特例が設けられています。
役員や従業員への貸付金の金利を取らなくてもよい場合
以下の場合は、上記にかかわらず、金利を取らなくても給与課税はしなくてもよいということになっています。
1.災害や病気などで臨時に多額の生活資金が必要となった役員または使用人に、その資金に充てるため、合理的と認められる金額や返済期間で金銭を貸し付ける場合
2.1.以外の貸付金の場合で、「役員または使用人に貸し付けた金銭の利息について」の利率により計算した利息の額と実際に支払う利息の額との差額が1年間で5,000円以下である場合
この記事の執筆者
-
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
最新の投稿
- 会社法2024年11月20日合同会社で出資の払戻しをするときの金額の限度額規制
- 税務会計2024年11月18日車両を会社で固定資産で計上する際の車検証の名義
- 商業登記2024年11月15日定款などでお金を表現する際に「金」という言葉が付いている理由
- 税務会計2024年11月13日株式の譲渡所得の確定申告とふるさと納税の現限度額の関係