定時株主総会の開催が遅れた場合の役員の任期
取締役の任期については、会社法では以下のように定められています。
会社法 第332条
取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。ただし、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することを妨げない。
2 前項の規定は、公開会社でない株式会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)において、定款によって、同項の任期を選任後十年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することを妨げない。
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また、上記の2項を受けて、多くの中小企業では取締役の任期を最長である任期10年まで伸長しています。
上記から分かるように、任期の切れ目は「定時株主総会の終結の時」までということになっています。また、定時株主総会は毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないということが会社法で規定されています。
よく、「定時株主総会は毎事業年度終了後3か月以内に招集する」ということが定款で定められています。これは、会社法で基準日株主が行使できる権利は基準日から3か月以内に行使するものに限るという定めがあるためです。3か月以内に定時株主総会を開催しないといけないという定めがあるわけではありません。
そのため株主兼代表取締役が1名の会社など小規模な会社のように、基準日を定める必要がない会社においては定時株主総会を3か月以内に開くことは会社法の観点からは意味のあることではありません。
とはいえ法人税の申告を決算日から2か月以内(延長したとしても3か月以内)には提出しなければならないことを考えると、決算書の承認を行う定時株主総会も税法の観点から3か月以内には開催する必要が出てきます。
しかし、赤字の会社で経理処理が追いついておらず、結局決算書が完成せずに決算日から3か月を過ぎても決算書が完成せずに法人税申告が行えなかったという会社もあります。中には数年間決算書が完成しないというところもあります。
その会社の場合、決算書の承認を行うための定時株主総会を定期に開催できないということになります。
そして定時株主総会が開催できないということは役員の任期も終わらないということになります。会社法上は定時株主総会は定期で開催する必要がありますが、遅れて開催した定時株主総会であっても決算書の承認などを行うために開催した総会は定時株主総会として扱うべきです。そして、定時株主総会の遅れの期間について特に制限が設けられているわけではありません。
しかし、本来であれば定時株主総会は毎年決まった時期に開催することが義務付けられています。
会社法
(株主総会の招集) |
そのため、もし決算日から3か月以内に定時株主総会が開催できなかった場合、取締役の任期としては3か月経過日においていったん満了したものと考えます。それではその後、実際に定時株主総会が開催されるまでの空白期間はどのようになるかというと、その取締役は権利義務取締役として職務を継続しなければなりません。
結果として、役員の任期は10年といいつつ、例えば10期目の定時株主総会の開催が1年遅れれば、約11年間の任期になるということです。(実際には10年の任期と1年の権利義務取締役期間)
この場合、登記の申請時期にも影響が出てきます。また、定時株主総会が開催できていないからといって重任登記を行っていないと、場合によってはみなし解散の対象にもなりますので注意しましょう。
重任の登記については当事務所でも申請を承っています。お気軽にご相談ください!
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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