利益剰余金の資本金への組み入れ
株式会社が資本金を増やす方法には、新たに出資を受ける方法(有償増資)がケースとしては多いですが、それまで積み上げてきた利益を資本金に振り替える方法(無償増資)という方法もあります。
無償増資は、新たに外部からお金を入れるわけではなく、会社がそれまで稼いできた利益を資本金に振り替えるので、株主資本の中で数字が入れ替わるだけの処理となります。
利益剰余金を減少できる額は、株主総会の決議を行った日の利益剰余金の額までです。つまり、利益剰余金が0円になるまで資本に組み入れることが可能ということです。
利益剰余金の資本金への組み入れを行う理由
会計処理としては、利益剰余金を資本金に振り替えるだけなので非常に単純ですが、そもそもそうすることのメリットはどのようなところにあるのでしょうか?
多くのケースは、対外的なイメージの向上です。資本金100万円の会社よりは資本金1,000万円の会社のほうが大きく見えます。実態はさておき、資本金の額が大きければそれだけ会社の規模も大きく安定しているのでは、という気がします。対外的なイメージアップにもつながりますし、人材を募集するときも応募者にとって一つの安心材料になります。
有償増資では資本金を900万円増やすのに、会社の預金とは別に、新たに外部から900万円を調達する必要があります。しかし、利益剰余金の資本金への組み入れであれば、1円も外部から資金を調達することなく増資が可能です。
利益剰余金の資本金への組み入れの登記手続き
決議としては株主総会の普通決議で足ります。決議事項としては、
1)減少する剰余金の額
2)資本金の額の増加がその効力を生ずる日
です。
特にそれ以外の手続き(官報公告など)は必要ないので、決議した日にすぐ効力を発生されることもできます。決議後は、2週間以内に増資の登記を行わなければいけません。登記の際にかかる登録免許税は、増加した資本金の額の0.7%(ただし最低3万円)です。
利益剰余金の資本金への組み入れにかかる税金上のポイント
こうして、1円も動かすことなく資本金の額を増加させられるのですが、一点注意しておくことがあります。これは税理士が気を付けることかもしれませんが、税法上の資本金は「払い込みを受けた額」として定義されているので、利益剰余金の資本金への組み入れにより増加した額は、法人税法上の「資本金等の額」にはなりません。
このパターンでずれるのは、住民税の均等割の計算です。利益剰余金の資本金への組み入れを行った場合には、間違って法人税法上の資本金等の額で均等割の額を判断しないように注意しておきましょう。均等割は利益剰余金の資本金への組入額も含めて判定します。
その他の点、例えば1億円以上の資本金では中小企業のメリットが受けられなくなる点などは有償増資と変わらず、決算書上の資本金の額で判定します。
これまでは資本金に組み入れる前提で話をしてきましたが、資本準備金に組み入れることもできます。もともとの対外的イメージの向上といったメリットを考えると、外には見えない資本準備金への組み入れをする理由はないかもしれませんが。
ちなみに、この方法が取れるのは株式会社だけです。合同会社については、利益剰余金を資本金に組み入れることはできません。(合同会社でも資本剰余金を資本に組み入れることは可能です。)
V-Spiritsグループでは、登記面だけではなく、税務面からも利益剰余金の資本金への組み入れについての手続きをサポートしております。新たに出資を受けずに資本金の額をアップさせたいといった場合はぜひご相談ください!
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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