決算公告の意味と歴史
株式会社が事業年度終了後に義務付けられている決算公告。合同会社では株式会社と違って決算公告は義務付けられていません。株式会社と合同会社の違いを語るときに必ずと言ってよいほど挙げられるポイントです。
それでは、なぜ合同会社では決算公告が法的に義務付けられていないのでしょうか。この点を考えるには、そもそもなぜ株式会社に決算公告が必要なのかということを考える必要があります。
株式会社の決算公告は、旧商法の時代から義務付けられていました。その目的は、その株式会社と新たに取引しようとする者や新たに出資しようとする者にその企業の情報を与えるためということでした。株主や債権者は別途計算書類の閲覧請求権を行使して公告よりも細かい情報を得られる手段があります(閲覧の費用が掛かる場合はありますが)ので、公告を見る意味はありません。
一方で、旧商法での有限会社については、閉鎖的な企業であり、少なくとも新たに出資をしようとする人のために情報提供する必要はないということで決算公告は義務付けられていませんでした。
時代は変わり、企業の情報はインターネットで閲覧でき、かつ公告されているのも貸借対照表の主要部分だけという意味のなさもあり、会社法制定時に公告制度そのものも廃止しようという動きもあったようですが、結局そのまま会社法でも公告制度は生き残りました。
ただ、従来有限会社に公告義務を課していなかったことから、有限会社の代わりとなる合同会社その他の持分会社(合名会社、合資会社)でも決算公告の義務付けは行われませんでした。ちなみに、特例有限会社についても決算公告は義務付けられていません。
なぜ合同会社では決算公告は必要ないのか
なぜ合同会社に決算公告が義務付けられていないのかという答えは、直接的には「旧商法の有限会社に決算公告は義務付けられておらず、その流れを引き継いだため」ということになります。ただ、そもそも決算公告制度そのものの有効性が薄れている(というかほぼ意味がない)現代において、株式会社には決算公告が義務付けられていること自体に議論が必要かもしれません。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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