自己株式の処分とは?
株式会社がいったん取得した自己株式を、新株発行の代わりに外部の株主に交付することを「自己株式の処分」といいます。自己株式を再び外部に放出せずに社内で消してしまう自己株式の消却手続きも含めて、自己株式の処分ということもありますが、本文では新株発行の代わりに外部株主に渡すことを自己株式の処分といいます。
自己株式の「処分」といっても、株式を発行した会社自体は、自己株式を任意のタイミングで他者に売却できるわけではありません。自己株式を処分するには、募集株式の発行と同じ方法によらなければならないと会社法で定められています。株主からしてみれば、それが新株発行だろうと、もともと会社が持っていた自己株式(金庫株)の取得だろうと変わりはありません。新たな株主を生まれる以上、新株発行と同じような手続きが必要ということです。
自己株式の売却の手続き
自己株式を売却するには、原則として株主総会の特別決議が必要です。
決議すべき事項は、以下の4点です。新株発行と異なり、増加する資本金や資本準備金の額は決議事項になりません。そもそも資本金等が増加しないためです。
- 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。)
- 募集株式の払込金額(募集株式1株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。)又はその算定方法
- 金銭以外の財産を出資の目的とするとき(現物出資を行うとき)は、その旨並びに当該財産の内容及び価額
- 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は財産の給付の期日又はその期間
なお、自己株式を売却しても登記には影響ありません。資本金の額は変動しませんし、新たに株式を発行するわけではなく発行済み株式総数も変動しないためです。この点は、自己株式を消却した場合には発行済み株式総数が変動してとうきがひつよ
自己株式の売却の税務
自己株式を売却した場合、新株発行と同じように株主となる者から払い込みが行われます。それではこの払い込みが行われた金額が資本金や資本準備金になるのかといえば、そうではありません。
自己株式は一度新株を発行して株主から払い込みを受けた株式を買い戻したものです。新株発行時に払い込みを受けて資本金を増加させているため、買い戻した後に売却してもその代金は資本金にはなりません。この場合、自己株式の売却額と取得額の差額は、その他資本剰余金として扱われます。ただし、自己株式の売却に伴って損が生じた場合には、利益剰余金をマイナス(その他資本剰余金があればそちらから先にマイナス)する処理を行います。
例1)1,000万円で買い取った自己株式を1,100万円で売却した場合
⇒100万円のその他資本剰余金の増加
例2)1,000万円で買い取った自己株式を900万円で売却した場合
⇒100万円の利益剰余金の減少(ただし、その他資本剰余金があれば、その金額を優先的にマイナスする)
いずれにしても、自己株式の売却によって差損が生じても差益が生じても、損益計算書には影響せずに純資産の部の中で数字が動くだけということになります。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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