コラム

取締役を予選することはできる?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

取締役の予選とは?

取締役の選任については、以下の通り定められています。

会社法 第329条
  1. 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。
  2. (中略)
  3. 第1項の決議をする場合には、法務省令で定めるところにより、役員(中略)が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の役員を選任することができる。

役員の選任は株主総会のみに認められた事項です。

この選任のタイミングですが、本来であれば新たに役員を就任させるタイミング、または任期満了であれば定時株主総会にて選任することになります。しかし、在任中の取締役の後任として特定の者を選任することは既定路線だけど、まだ定時株主総会までに時間があるといったこともあり得ます。

このような場合に、取締役を将来の特定の日付から就任させる、いわゆる予選が行われることがあります。予選を行っておくことで就任予定の取締役候補にとっては就任の確実性が増しますし、退任予定者にとっても退任後の権利義務取締役の問題も出ないので安心です。

取締役を予選すること自体は、特に会社法上禁止されているわけではないので、問題ありません。予選といえども取締役の選任なので株主総会で決議すべきことには変わりありません。定時株主総会で取締役を予選することは理屈上あり得ないので、予選するなら臨時株主総会ということになります。

取締役の予選ができる条件

取締役の予選は会社法上規定されているわけではありませんが、一般的に以下の2つの要件を満たしておく必要があります。

1)予選から就任予定日までの間が1か月程度であること

2)予選から就任予定日までの期間中に新株発行や株式譲渡などによって、臨時株主総会と定時株主総会の間に株主の権利変動が予定されていないこと

1)の期間については、合理的な理由(株主が集まれるのが2か月に一回など)があればある程度の幅を以て許容できると考えられますが、それでも例えば半年前に予選するなどは2)の点からも不確実性が多く、認められないと考えられます。

補欠取締役と取締役の予選の違い

取締役の予選と似たようなものに補欠取締役の選任があります。補欠取締役とは、選任した取締役が辞任などで欠員が出た場合に備えて、あらかじめ後任として選任しておく取締役のことです。補欠取締役と取締役の予選は混同しないようにしておきましょう。

 

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

関連記事

新着コラム

  1. 事業目的を定款に記載するときの「及び」と「並びに」の違い定款に事業目的を記載するときは、法律...
  2. 会社設立前に資本金を使えるケース会社の設立を決めてから会社設立を実際に登記申請するまでには一...
  3. 一人で出資して一人で代表取締役となっている会社は数多くあります。
  4. 合同会社に「社員総会」は存在しない株式会社では投資家の意思決定は株主総会で行います。
  5. 役員重任する際の株主総会のパターン株式会社では、取締役の任期は最長でも10年間と定められてい...
ダウンロードはこちら