消費税は、原則として売上に含まれる消費税から費用に含まれる消費税の差額を納税します。これは、法人でも個人でも同じです。
しかし、一部の取引では日本での納税を行うことが困難な場合があります。それは外国の事業者が日本で行うサービスについて課税が行われる場合です。
なぜこのようなことが起こるかというと、以下の取引ではサービスをする側ではなく、サービスを受ける側の国で消費税を発生するということになっているためです。
1)国外の事業者が日本国内で行う「事業者向け電気通信利用役務の提供」
2)国外の事業者が日本国内で行う演劇・スポーツ等の「特定役務の提供」
特定役務の提供は外国の劇団が日本で講演した場合など限られるケースなので、多くのケースで該当するのは「事業者向け電気通信利用役務の提供」です。
上記に該当する場合、外国の事業者は少額だけ発生した日本での消費税を納税するためだけに日本で消費税の申告をすることになります。しかし、法人税など稼ぎそのものにかかるお金は本国で納税しているわけで、日本で発生した上記のサービスの提供の分だけの消費税をわざわざ日本で確定申告して日本で納めるといったことが行われることは非現実的です。
そのために行われるのが、消費税の納税義務の転換、つまりリバースチャージ方式です。リバースチャージとは、課税義務をサービスを提供する国外事業者からサービスを受ける国内事業者に転換(リバース)して、国内事業者が消費税を負担(チャージ)する納税方法です。
リバースチャージ方式の仕訳方法
リバースチャージ方式が適用される場合、仕訳も独特なものとなります。例えば、日本国内の会社が海外の企業からビジネス向けシステム利用料として1万円を会社のクレジットカードで支払った場合、以下のようになります。
(支払手数料) | 10,000 | (未払金) | 10,000 |
(仮払消費税) | 1,000 | (仮受消費税) | 1,000 |
海外の事業者は日本で消費税を申告して納税することが困難なので、代わりにサービスを受ける国内事業者がその分の消費税を納税することになります。海外の事業者の請求額(この例だと1万円)には消費税が加算されていないので、処理の際に消費税分を仮受消費税として加算して、かつ仮払消費税にも計上します。この場合、売上が上がっていないのに仮受消費税が出てくることに違和感を感じますが、まさにこの仮受消費税は国外事業者が国内で納めるべき消費税です。海外事業者が計上すべき仮受消費税を代わって日本の事業者が計上し、かつ納めてあげるということです。
リバースチャージ方式が不要な事業者とは?
リバースチャージを適用した仕訳は結局仮受消費税と仮払消費税が同額で計上されるため、事業者にとってはただ手間が増えるだけですし、国にとっても納税額に影響がないため、まったく不毛な処理となってしまいます。唯一意味があるとすれば、売上規模が大きかったり、非課税の売上割合が多かったりする事業者は、消費税の納税額の計算上仮払消費税の全額を控除できない制度になっています(詳しくは顧問税理士に確認してください)ので、そうした事業者は上記の仕訳でも仮受消費税と仮払消費税がイコールにならないことになります。
そのため、リバースチャージ方式はそうした事業者に限って仕訳に反映させればよいということになっています。
具体的には、以下のようになります。
課税売上高が5億円超 | 課税売上高が5億円以下 | |
課税売上割合が95%以上 | リバースチャージの適用は不要
仮払消費税は全額控除できない |
リバースチャージの適用は不要
仮払消費税は全額控除できる |
課税売上割合が95%未満 | リバースチャージの適用は必要
仮払消費税は全額控除できない |
リバースチャージの適用は必要
仮払消費税は全額控除できる |
結局、課税売上割合が95%以上であればリバースチャージ方式については気にしなくてもよいということになります。例えば介護事業者などで非課税の売上が多く、たまに物販などで課税売上が発生するような事業者が外国のシステムを導入するなどのケースでは通常は課税売上割合が95%リバースチャージの処理が必要となります。
万が一誤った経理処理をしていると、い自社がどのパターンに該当しているかということは顧問税理士にしっかりと確認しておきましょう。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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