コラム

海外の個人事業主が日本で仕事をした場合の課税は?

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

海外在住の人の課税関係

海外在住の個人事業主の方が日本に来て一時的に仕事をするということがあります。例えばシステム導入のコンサルティングで数か月滞在するケースや、講演やセミナーの講師として数日から数週間ほど滞在するようなケースです。

この場合は、滞在期間が1年未満になれば非居住者扱いになるため、課税対象は国内源泉所得のみになります。国内源泉所得では、海外の個人事業主については「国内で行う人的役務の提供を事業とする者の、その人的役務の提供に係る対価」と表現されています。

この場合、海外在住の個人事業主が日本で恒久的施設(PE)つまりオフィスなどを有しているかどうかで課税関係が大きく変わります。(以下、恒久的施設では分かりにくいのでオフィスという言葉を使います。)

日本国内にオフィスを有していればオフィスに帰属すべき所得が国内源泉所得になります。オフィスがなければ国内で行った業務に係る対価が国内源泉所得に該当します。

租税条約によって課税関係が変わる場合もある

租税条約では、オフィスなどの恒久的施設を有していない場合は、役務提供国での課税を行わない旨定めている場合があります。

例えば、日本とイタリアの間で締結されている租税条約では、以下のように規定されています。

日伊租税条約
第14条
方の締約国の居住者が自由職業その他これに類する独立の活動に関して取得する所得に対しては、その者が自己の活動を遂行するために通常使用することができる固定的施設を他方の締約国内に有しない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。その者がそのような固定的施設を有する場合には、当該所得に対しては、当該固定的施設に帰せられる部分についてのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

つまり、イタリア在住の人が日本で業務を行っても、その人が日本国内に恒久的施設を有していなければ、日本では課税せずにイタリアのみで課税するということが定められています。

ただし、本来は国内源泉所得については、源泉徴収が必要となってきます。そのため、上記の租税条約の適用を受けるために、日本の税務署に対して「租税条約に関する届出書」を提出しなければいけません。提出するのはサービスを受ける会社です。そのため、提出先の税務署も業務を受ける会社の納税地の管轄税務署となります。海外在住の人から日本国内でサービス(コンサルティングや講師など)を受ける場合には、どの国に在住の人なのかということや、その国との間の租税条約のことも必ず調べるようにしましょう。

この記事の執筆者

渋田貴正
渋田貴正
V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。

関連記事

新着コラム

  1. 疑似外国会社とは?会社法には、以下のように疑似外国会社の活動を制限する規定が設けられています...
  2. 合同会社の定款には、以下の事項を記載することが必須となっています。
  3. 合同会社で社員が退社する場合、その社員の持分払戻しに伴って資本金が減少するような場合には債権者保護手...
  4. 株式会社を設立する場合に必ず決めなければならない項目の一つが1株当たりの単価です。
  5. 自ら記帳を行っている会社や個人事業主も数多くいる中で、さまざまな帳簿を見ることに...
ダウンロードはこちら