役員への給与(役員報酬)については会社法上は株主総会の決議で決めるという制限がありますが、さらに法人税法上には金額の規制もあります。
法人税法上の金額規制としては、以下の二つがあります。
定期同額給与 | 役員の月給を規制 |
事前確定届出給与 | 役員のボーナスを規制 |
この中でも、事前確定届出給与は税務署への金額の届出が必要で、かつ届出の期限も厳密に定められているため要注意です。
株主総会で決めた場合 | 決議後1か月以内(ただし、職務執行日が株主総会の決議日後である場合は職務執行日から1か月以内)
または事業年度開始から4か月以内のいずれか早い日 |
会社設立した1期目で、会社設立の時から職務を開始する場合 | 設立日から2か月経過した日 |
そのため、上記の通り、以下の場合には、その役員に関する事前確定届出給与については特別に設立から2か月経過日という定めが設けられています。
1)設立1期目であること
2)会社設立時点から開始される職務を遂行する役員であること
事前確定届出給与における「職務開始日」
事前確定届出給与の届け出期限の起算点となる「職務開始日」ですが、この言葉だけだと正直よく分かりません。
職務開始日とは通達では以下のように定められています。
「その役員がいつから就任するかなど個々の事情によるのであるが、例えば、定時株主総会において役員に選任された者で、その日に就任した者及び役員に再任された者にあっては、当該定時株主総会の開催日」
株主総会で役員に選任されて、その議場で就任承諾した場合はその日から職務開始となるという点は普通のことを言っているだけですが、その他は「個々の事情による」とだけいっています。
それでは会社設立1期目の職務開始日というのはいつになるのでしょうか?この点については、通常であれば職務開始日は会社設立日になります。しかし、例えば在職中に会社の設立だけ済ませて退職後に実際に事業を開始する(在職中は登記しただけで会社が稼働することは一切ない)というようなケースでは実際の職務開始日は事業開始日となります。
税務署の法人設立届出書にも、会社設立日の欄とは別に事業開始日を記入する欄があることからも、税務上は会社設立日と事業開始日(事業開始から職務執行)を分けて考えていることが分かります。
このような特殊ケースにおいては、会社設立と同時に職務開始とはならないため、「法人設立の時から開始する職務」が条件である設立してから2か月以内という制限も課されないと考えられます。ただし、この場合は原則に立ち戻って最低限設立から4か月以内という制限は適用されるでしょう。
いずれにしても会社設立の1期目に支給する事前確定届出給与(役員ボーナス)については届け出期限が特殊です。税理士と相談の上慎重に決めることをオススメします。
この記事の執筆者
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V-Spiritsグループ 税理士・司法書士・社会保険労務士・行政書士
税務顧問・社労士顧問のほか、会社設立登記や会社変更の登記などの実務を幅広くを担当。その他各種サイトや書籍の執筆活動も展開中。
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